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第22話
「これ、あなたの作品ですか?」
「そう。東雲幸成です。きょうで撤収だから手伝いに来たんだ。あと1時間くらいで終了だからね」
「撤収って活けた人がするんですか?」
「そうとは限らないけど、僕はいつも自分でやるね。この紙細工は壊したくないし」
確かに出し入れに気を使いそうな繊細な紙細工だった。出品者なら壊したくないと思うだろう。
話を聞くと、生け花展では毎日ようすを見に来る出品者もいるらしい。
何しろ生の花だから枯れたり予想以上に咲いたりすることがあるらしく、それを調整するとのことだった。
「きみも生け花をしてるの?」
「いえ、やったことないです。チケットをもらったんで、初めて生け花展に来て、イメージと違うからびっくりして」
ああ、と東雲が笑う。人当たりがいいやわらかな笑顔。
「フラワーアレンジみたいなのを想像してた?」
「そういうのとか、床の間に飾ってあるようなのとか」
「なるほどね。そういう生け花もあるけど、もっと自由に活けるほうが楽しいでしょ。よかったらどうぞ」
優雅と言ってもいいしぐさで名刺を差し出された。大人の男性から渡された、生まれて初めて受け取る名刺にどぎまぎする。
名刺の表には流派名と師範東雲幸成とあって連絡先が書いてあり、裏には生花教室の地図が入っていた。
「生花教室をされてるんですか?」
「そう。といってもまだまだ下っ端だけど。生け花には興味ない?」
「…考えたこともないです」
すこし困ったが正直に答えると、東雲は気を悪くすることもなくまた笑みを見せた。
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