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第27話
夏休み中に綾乃も含めた10人ほどで海水浴に行った。
大学生のなかに高校生の自分が混ざるのはとても気まずかったが、綾乃にほかの子も彼氏連れで来るから祐樹も来てねと誘われたら断るのも悪い気がして、大澤先輩も来るから平気だよと言われたのもあって参加した。
大学生といっても1、2年生ばかりだったせいか、年下の祐樹にも親切で邪険にされることもなかった。
誰かの弟だという高校生ふたりも来ていたので、彼らと話したり綾乃に連れまわされているうちに時間は過ぎて、思ったより楽しく過ごせてほっとした。
ただその時、大澤狙いの女子がふたり、静かなバトルを繰り広げていてかなり引いた。
大澤は彼女持ちだと宣言したにも関わらず(都合が悪くて大澤の彼女は不参加だった)目線や態度であからさまに牽制しあったり大澤の気を引こうとしたり、そういうことに鈍い祐樹から見てもかなり態度が悪かったのだ。
その帰りに大澤の車に乗せてもらって、綾乃と3人でドライブした。車内で大澤はさすがにすこし疲れた顔で、お前らが乗ってくれて助かったとこぼした。
それをふと思い出した。
あのふたりの女子の態度こそ「欲望あらわ」だったんじゃないだろうか。
大澤に振り向いてほしいと周りが引いているのも見えないくらい、あるいは見えていても無視できるくらい必死だった。
そういう気持ちをいままで祐樹は誰にも向けたことがない。綾乃は好きだが、相手から告白されたこともあって気楽な気持ちでつき合ってきた。
あの日、綾乃は年下のきれいな彼氏を友達に自慢できてうれしかったらしく上機嫌だった。
友達の何人かにまだ子供じゃないと揶揄されても、いいの、祐樹はかわいいからとさらっと返事をしていた。
そのとなりで祐樹は何も気にしていないふうに笑っていた。
もし何か言われたらそうして欲しいと綾乃が事前に教えたからだ。
綾乃が自分に向けてくれる気持ちはどういうものだろうと祐樹は最近考える。
あのふたりのように気持ちを押しつけてきたりはしないし、一緒に出掛けて学校でのたわいない話をしたり映画を見たり、ごくふつうにデートしている。
ときどきはキスもするが、たいていは手をつなぐだけで、それ以上どうこうという雰囲気になったことはない。祐樹から積極的に誘うこともなかった。
自分はちょっと淡白なのかなと思う。
体の成長が遅かったからたぶん人より精通も遅かったのだろうし、自慰もあまりしない。
兄が3人もいるので自宅でエロ本でもAVでも簡単に手に入るし、そのせいで耳年増になってよけいな知識ばかりあるせいか、女の子に夢を持てないのかもしれない。
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