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第6章 一年後の約束

「ここ? これって自宅?」 「そうみたい。シルバニアファミリーみたいで素敵。生け花教室だし和風のお家かと思ってたから、なんかびっくり」  目の前にはオレンジ色っぽいあたたかい色のレンガと白い壁が配色された、かわいい外観の洋館がある。綾乃とふたりで名刺の住所を見て、東雲の生け花教室を訪ねてきたのだ。  門扉のところには2枚の案内プレートがかかっていた。  しゃれた書体の東雲フラワーアレンジメント教室のものと木製のシンプルな生け花教室のもの。東雲は2つの教室を持っているのだろうか。  チャイムをならすと、インターホンではなく東雲本人が庭のほうから顔を見せて、こっちだよと直接声をかけてきた。玄関ではなく庭へと続くアプローチに向かう。 「こんにちは」  祐樹が礼儀正しく頭を下げた。  横で綾乃もならう。 「電話で話した松原綾乃さんです」 「松原綾乃です。きょうはよろしくお願いします」  東雲は展示会で会ったときと同じように、やわらかな笑みで歓迎してくれた。  あの生け花展から2週間がたっていた。 「祐樹くんから話は聞いてます。若い子が生け花に興味を持ってくれるって、とてもうれしいよ。ゆっくり見ていって。松原さんはお花も用意してあるからお稽古していってね」 「はい、ありがとうございます」  綾乃の返事にこっちでお稽古してるからと東雲が庭の一角にたつ建物を指した。  プレハブ建ての離れが稽古場になっているようで、そこからにぎやかなおしゃべりの声が聞こえていた。  靴のままで中に入ると、数人の女性が枝や花を会議テーブルのうえに広げていた。

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