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第39話

「ひとり? ていうか祐樹姫、すっごい背が伸びてるなあ。目線が違う。いまどれくらい?」  祐樹の目線の高さに驚いた顔を隠さず、本多がぽんぽんと祐樹の頭にかるく触れた。 「姫はやめてください。175くらいです。中3のとき急に背が伸びて」 「ああ、ごめん。じゃあ姫は取って祐樹でいい? そうか、成長期だったんだな。背が伸びたらなんか雰囲気変わったな」 「そうですか?」 「ん、きれいになったな。もてもてだろ」  さらりときれいなどと言われても反応にこまる。赤くなったのをごまかすように訊いた。 「そうでもないです。本多先輩こそ、ひとりですか?」 「ああ、さっきふられたばっかり」  にこにこしてそんなことを言う。  これはたぶん冗談だよな?   それへ祐樹が反応する暇もあたえず、背中をかるく押して歩き出した。 「というわけだから、ちょっとお茶しようぜ。時間ある?」 「ええと、はい」  すこし迷ったが、久しぶりに会う先輩にじゃあさようならというのも気が引けて、祐樹は誘いに乗ることにした。  レストランフロアにあるカフェは混んでいたが、通路に面したカウンターには空きがあった。  ふたりで並んでそこに座る。向かい合わせに座るより緊張しなくて助かった。 「卒業以来か。姫、じゃない、祐樹は大澤とは会ってんの?」 「はい。先月、大学の学祭にお邪魔したので、その時に会いました」  学祭には綾乃に誘われて華道部の作品を見に行った。  綾乃はあれからもう一度、東雲の生け花教室に稽古に行ったらしい。その時の話をいろいろ聞かされた。  大学という場所に行ったのは初めてだったので、その広さにも驚いたし人の多さにも驚いた。 「へえ、そうなんだ。まだそんな交流あるんだ」  大澤と本多は大学が違ったので、それほど連絡は取っていないらしい。あまり近況を知らないようだった。  高校時代はけっこうつるんでいるように見えたのですこし意外だった。  それとも大学に入ると、そこでのつき合いがメインになってしまって高校時代の友人とは疎遠になっていくものなのだろうか。

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