42 / 101
第42話
「年上の彼女はけっこう大変?」
「たぶんそうでもないと思うんですけど。なんていうか、彼氏っていうより弟みたいな扱いっていうか」
「あー、なるほどね。でもそろそろ弟扱いは終わりって感じかな?」
何とも答えようがなくて祐樹は黙りこむ。そうなのかもしれないと思う。綾乃だって本当は祐樹にリードしてもらいたいときもあるだろう。
「じゃあ、祐樹はクリスマスエッチか。頑張れよ」
「違いますって」
ずばりとからかわれて顔が赤くなるのを自覚する。
10月の祐樹の誕生日に綾乃は「祐樹の雰囲気に合うと思って」とマフラーと手袋のセットをプレゼントしてくれた。
やわらかなウールのきれいな水色のセットは男子校では浮いている気もしたが、祐樹は毎日それを使っていた。
それくらいしか綾乃の気持ちに応えてあげられることがない気がしていた。
そのときは祐樹が実力テスト真っ最中だったので、テスト終わりにランチをして、プレゼントをもらっておとなしく家に帰った。とくにデートらしい雰囲気にはならなかった。
クリスマスはまだどういうことになるか約束していない。
ひとり暮らしをしている綾乃の部屋で会うことになれば、たぶんそういう流れになるのだろう。
祐樹はまだ覚悟ができていない。内心では怯んでいるが、どうすればいいのかよくわからなかった。
つき合って半年って、ちょうどいいタイミングだよな。
先週、雑談のなかで言われた河野の言葉を思い出す。祐樹より河野のほうがよほど前のめりだ。
ちょうどいいタイミングってなんだよ。
おれはべつに一緒にしゃべって楽しく過ごせればそれで満足なんだけど。でも綾乃は期待してるんだろうか。
そういう河野はつき合いはじめて3か月の彼女とのデートに力が入っている。その熱さを目の当たりにして、祐樹はますます自分の恋愛テンションの低さを自覚させられた。
おれって恋愛に関心なさすぎる? それとも初心者だからこんなもの?
相手から告白されるのじゃなく、自分から好きになったらまた違うんだろうか。もっと積極的に会いたがったり、相手を欲しがったりする?
そんな自分が想像できなくて、祐樹は戸惑ってしまう。
ともだちにシェアしよう!