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第43話
「それにしても、まさか祐樹姫の恋愛話が聞けるとは思わなかったな」
「だから、姫じゃないですって」
「あー、ごめんごめん。癖になってて。でもほんと、かっこよくなったよな」
本多がまじめな顔してそんなことを言うから、落ち着いてきた顔色がまた赤くなってしまう。おれって顔に感情が出過ぎだよな。
どうにか落ち着こうとこっそり深呼吸を繰り返す。
しばらく高校の先生たちのことや、現在の生徒会のメンバーなどの話をして、祐樹がアイスカフェオレを飲みきってしまうタイミングで、本多がすっと伝票を手に取った。
そろそろ時間なのだろう、そのスマートな仕草に本多のもて加減がわかる気がした。
「引きとめてわるかったな。いいプレゼントが見つかるといいな」
「いえ、こちらこそ、アドバイスありがとうございました」
立ち上がってカウンターにもたれてちょっとためらったあと、伝票を手のなかでひらひらさせながらばつが悪そうに本多が言い出した。
「俺さ、ちょっと疑ってたんだよね」
「何をですか?」
「祐樹は本当は大澤のことが好きなんじゃないかって」
「は?」
「それに大澤もちょっとは祐樹をそういう目で見てるんじゃないかなって」
「え? そういう目って?」
「うん、だから、俺の誤解というか思い込みだったみたいだな」
「あ、ええ? 恋愛的におれと大澤先輩がって意味ですか?」
「うんそう。でもふたりとも彼女いるし、だけどまだ会ってるみたいだし、そうじゃなかったのかって」
「姫と王子って、あの学校のなかだけの設定ですよ? 大澤先輩にはずっと彼女がいたし」
「そうだよな、うん。ごめんな。ほら卒業式のこともあったから」
「ああ、あれ。あれはノリっていうか悪ふざけっていうか、断れなくて。べつに謝ってもらわなくてもいいですけど」
卒業式の後に、今までお世話になった先輩に体育館の舞台のうえからお礼をするというわけのわからない恒例イベントがあるのだ。
祐樹は舞台に引っ張り出されて、本多にそそのかされるかたちで大澤の頬にキスをした。
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