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第8章 違和感の中で

 そろそろ帰らないと晩ごはんに間に合わない。プレゼントはひとまず保留にした。  本多のいうとおり、一緒に買いに来るのが正解かもしれない。綾乃は祐樹と出かけるとうれしそうだし、今度誘ってみよう。  そういえば、祐樹から誘ったこともあまりない。  祐樹が綾乃とうまくいっているのは、綾乃がのんびりした性格で、ふたりで過ごしていればそれで満足しているところが大きい。  手をつないだりキスくらいはするが、誘われるまま一緒に出かけて買い物したりカラオケしたりボーリングしたり、それだけで楽しそうにしているように見える。  高校生と大学生の生活時間があまり合わなくて、それほど頻繁に会えないというのも大きいかもしれない。  祐樹の学校は行事が多く、放課後も準備や課外活動で時間を取られることが多いし、綾乃は綾乃でアルバイトやサークルに部活、友達付き合いと祐樹よりも忙しい。  そういうわけで平日のデートは週に1回くらい、それすら会えないときもある。  週末も祐樹の学校は土曜日も半日授業があり、綾乃もどちらかはアルバイトを入れていて毎週末会えるわけではない。  そんな忙しい日常のなか、「祐樹くんに会うとかわいくて癒されるなあ」と頭を撫でられているところからしても、男として期待されているとは思えない。  もしかしたら高1という祐樹の年齢に遠慮しているのかもしれない。  なにかと祐樹の恋愛の進展具合を聞きにくる河野には、お前らふたりって恋愛ごっこだなと言われる始末だ。中学生の仲良しカップルみたいだということらしい。  綾乃がそれでいいのなら祐樹には不満はない。  血気盛んな河野からみれば、祐樹ののんびりさ加減というか、欲のなさは信じられないらしい。  近くの女子高に彼女を作った河野は、少なくとも週に2、3回は会っているし、週末もほぼ一緒のようだ。  すでにキスはしていて、クリスマスが次に進むタイミングかななどと鼻息荒く計画を練っている。  「欲望あらわ」に迫ったらダメなんてどの口が言うんだと祐樹がからかうと、目のまえに彼女がいたらやっぱ無理と開き直っていた。  それでも彼女のまえでは必死に取り繕って、涼しい顔をしていろいろと我慢しているらしいのが健気といえば健気だ。

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