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第47話

「ばか、なんで彼女相手に菓子折りなんだよ。ちょっとだけ高いチョコとかクッキーとか、コンビニで買えるようなやつだってば」 「そうなんだ」 「そうなんだって…。祐樹はケンカしねーの? そういや聞いたことないな、ケンカしたとかもめたとか」 「うーん、そんな言うほどのケンカはしたことないかなあ」  言うほどのケンカどころか、言い争いレベルもないかもしれない。  祐樹はどちらかというと気が強くて負けず嫌いだし、学校のなかではかなり言い争いもするほうだ。  男子校なのでからかいあいが殴り合いに近いことになるときもあるが、それも怯まないし実は空手を8年もやっていたおかげでけっこう強い。  クラスのなかではのびのび言いたい放題なのを知っている河野は、ははあと目を眇めた。 「祐樹、彼女のまえでは猫かぶってんだろ」 「そうかな。そんなことないと思うけど」 「ちゃんと言いたいこと言えてる?」 「言いたいことって?」 「…やらせて、とか?」 「さいてー」  祐樹が顔をしかめると、河野は「はいはい、俺はさいてーですよ」と明るく返した。  何を言っても今は無駄だろう。河野の浮かれ具合を祐樹はほほえましく思う。  先日のクリスマスデートで彼女と念願の初体験を済ませた河野は、なにかと祐樹の世話を焼きたがるのだ。今までもそうだったが、きょうはとくにエッチ関係の方面に発言が偏っている気がする。  きょうが終業式でよかったと心底思う。  冬休みのあいだには河野もクールダウンするだろう。  いや、地元の高校生の彼女だから毎日デートで、休み明けはもっとテンション上がってるのか?  それもなんだか面倒だな。テンションの違いが大きすぎて、祐樹は河野の言っていることがほとんど理解できないのだ。 「いやいや、大事なことでしょ。まあやらせてはともかく、自分の気持ち、ちゃんと言ってる?」  河野の言葉の意味がよくわからなくて、祐樹は本気でとまどった顔になる。自分の気持ちって?

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