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第48話

「あー、あれなのかなあ。祐樹って男ばっか四人兄弟だし女子に免疫ないだろ。無意識に相手に遠慮してんじゃない?」 「うーん? 遠慮、なのかな?」  言われてみればそうかもしれないと思う。たしかに女子に免疫はない。小学生時代の女子はほぼ敵のようなものだったし、中等部のときはまったく接点がなかった。  たとえば男相手なら先輩の大澤にもかなり言いたいことを言っていた。綾乃には遠慮してるのか? でも言いたいことってべつに無いような…。  世の中のカップルはそんなに話したいことがあるんだろうか? 「それか彼女は年上だし祐樹が手のひらで転がされてて、ケンカにならないのかもな」  うんうんと河野はひとりで納得している。    綾乃は女子というより姉みたいな感じだったからつき合えたのかもしれない。ってことは、おれは女子は苦手なのか?  うん、たしかに得意ではないけれど、でもこの居心地の悪さはなんだろう。   ホームルームが始まるまで、祐樹は黙って考えに沈んでいた。 「で、なんで大澤先輩が来てるんですか?」  待ち合わせ場所の大型書店に現れたのは大澤だった。  年末の街はなんだか気忙しく、冬休みになっていることもあって人が多かった。 「綾乃、おととい出したレポート再提出で無理になってさ。きょうの夕方まで待ってもらえるそうだから、今ごろ図書館で必死だろ。俺は伝書鳩じゃないんだけどな」  そう言いながらも笑っている。  今朝まで必死にがんばったけど間に合わなかった、祐樹くんごめんねって謝ってたと聞けばそれ以上文句をつける気にはなれない。

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