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第58話

 週明けの月曜日、待ち構えていた河野につかまった祐樹は直球で質問された。 「で、結論から言うとどうだったんだ?」 「したよ」  祐樹のいともあっさりした返事に、河野はぽかんと王子さまの顔を見上げた。机に寄りかかって立っている祐樹は、座っている河野に向かってうなずいて見せた。 「え?」  驚く河野に、いつも通り汗のひとつもかかなさそうなさわやかさで河野を見返した。 「したって、お前。あ、そうなの? マジで?」 「うん。ゴムありがとう、助かった」  結果的には河野のくれたものが役に立った。 「え、いや、そんな顔でそんな礼を言われても…。うわあ、そうか。よかったな」  なにがよかったんだか祐樹にはよく理解できないが、河野はなんだか感動しているようにも見えた。 「どうしたの、河野」 「どうだった?」 「何が?」 「初体験」 「…ほっとした」 「なんだそれ?」  正直な気持ちだ。  つつがなくミッション完了できて、本当にほっとしたのだ。   「ちゃんとできたから」 「ああ、まあな。初めてって緊張するもんな」  河野は緊張からできないかもしれないと祐樹が心配していたと思ったらしい。そうではないのだが、祐樹は口にはしなかった。 「うん」  祐樹が心配していたのは綾乃相手に欲望を感じない自分がセックスなんかできるのか、ということだった。  実際、その場になってみれば、触られればちゃんと体は反応したし、生まれて初めて他人の手に触られてそれなりに興奮もした。  でも綾乃が経験者でなければ、最後までは無理だったかもしれない。  だから終わったあと、心底ほっとしたのだ。

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