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第59話

 大学生の試験期間が終わり、祐樹のスピーチコンテストも終わった3月半ばに、大澤カップルと4人で遊びに行くことになった。  まだ寒いのにテーマパークは学生や観光客であふれていて、4人でいくつものアトラクションに並んで乗った。  こんなに長時間並ぶと知らなかった祐樹は、大澤たちがいてよかったと安堵していた。綾乃とふたりだったら時間を持て余したかもしれない。  そんなことを考えながら行列に並んでいたが、目の前でいちゃついている見知らぬカップルを見て、ふと自分の考えに疑問を持った。  綾乃とふたりだと時間を持て余す? それとも気づまりに思う? あのカップルみたいに待ち時間も楽しく過ごせただろうか。  そう言えば、クリスマスパーティの時にも、同じようなことを思った。  ジェットコースターに乗ったりパレードを見たり、楽しく遊びながらも頭のすみに疑問は残り続けた。  大澤の車で女子ふたりを送って行ったあと、夜の街を走りながら大澤がさりげない調子で話しかけた。 「祐樹、綾乃とつき合ってて楽しい?」 「…なんでそんなこと訊くんですか?」  答えに困って質問で返した。 「いや、なんていうか。前からそうだったけど、冷めてるっていうのか、優しいけど熱がないっていうのか。綾乃としたんだろ? なのに冷静なんだな」 「知ってたんですか」 「しゃべったからって怒るなよ。綾乃、うれしかったんだろ。受け身な祐樹がちゃんと綾乃を誘ってくれたから」  そんなふうに思わせていたとは知らなくて、ちょっといたたまれない気持ちになる。  年上だからといってやはりリードされっぱなしはよくなかったのだ。  あの後、綾乃とは会うたびにセックスしていた。一度したら、誘わないといけないような気がして、そして誘えば綾乃は断らなかった。  きっと祐樹がしたがっていると思っているのだろう。  本音を言うなら、相変わらず祐樹には欲望がよくわからないし、ときめきも実感できない。   セックスはそれなりに気持ち良くなれるが、河野がいうような切羽詰って彼女を抱きたいという気持ちになったことはない。  これは淡白とか言っていいものだろうか?

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