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第69話
綾乃と別れたあと、高2の1年間で、祐樹は6人の女の子とつき合った。最短で3週間、いちばん長くて4カ月。全部、相手から告白されて始まり、祐樹から終わらせた。
「どうしちゃったの、祐樹」
3人目の彼女ができたとき、河野がふしぎそうに訊いてきた。7月のテスト終わりのことだ。
「何が?」
「いままでとっかえひっかえなんてしなかったのに、急に次々つき合うようになったから。なんかあったのかと思うじゃんか」
「べつに何もないよ。たまたま告白されて、いいなと思ってつき合ってみたけど違ったってだけで。二股はしてないよ」
「それはわかってるけど。いいなとは思ってるんだ?」
「思わなきゃつき合わないよ。なんで?」
「だって3人とも全然タイプ違うじゃん。押し切られてるんじゃないのか?」
よく見てるよなと河野の心配そうな顔に、“王子さまの笑顔”で笑って見せた。4月から意識して作るようになった笑顔だ。
「どんなタイプが合うかわからないから、いろいろつき合ってみようかなって。それだけ」
「…まあ、それはわかるけど。じゃあ好きな子とつき合ってるわけじゃないのか」
「好きになれそうな子を選んでるんだけど。…これってあんまよくない?」
「いや、そんなことないけど。始めはそうじゃなくても、つき合ってるうちに好きになることもあるだろうし」
祐樹は意識してやわらかい表情を浮かべた。
「初めての彼女が年上だったから、同級生とか下級生の彼女ってよくわからなくて。試行錯誤中?」
どこか釈然としない顔で、河野は眉間にしわを寄せる。
「祐樹、最近変わったし。前はもっと元気だったっていうか、わかりやすかったっていうか。いまはなんか…、お上品に作ってる感じがする」
祐樹はちょっと困って目を伏せた。感情が顔に出ないようにコントロールする。
それは意識してやっていることだった。
こっそりお手本にしているのは東雲だ。張りがあるのにやわらかな話し方や、にっこりと笑って内心を悟らせないところなど、東雲のたたずまいというかふるまいは祐樹の理想に近い気がした。
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