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第71話
「で、今度はどんな彼女なんだ?」
目のまえで大澤が千切りキャベツを頬張っている。祐樹は豚カツを箸ではさんでソースにつけた。ひき立てのゴマの香りが好きだ。
「オセロがめちゃくちゃ強い子」
「なんだ、それ」
「おれ、5枚しか取れなかったんですよ、その子から」
4人目の彼女は近くの女子高に通うオセロ部のエースだ。
夏休みの始めに友達数人と行ったカラオケのメンバーにいて、オセロしようよと誘われた。カラオケボックスの片隅で彼女がカバンから出したポケットオセロで勝負した。
ゲームしながら、にこっと笑って「つき合おうよ」と告白されて、いいよと返事をしたのだ。
「その子のどこがよかったんだ?」
「おれに手加減しないところ」
友達が歌うカラオケをバックに3回勝負して、どれもさんざんな結果だった。それが悔しくてつき合うことにした。
「なんというかまあ、適当だな」
祐樹の分までキャベツとみそ汁とご飯のおかわりを店員に頼んで、あきれたように眉を上げてみせる。
「きっかけなんてそんなもんでしょ」
「そりゃそうなんだが」
開き直ったともとれる台詞に大澤は苦笑した。
テーマパークに行った帰りの車で沈黙のまま別れてからも、大澤とは月に1回くらいのペースで会っていた。
卒業後の2年間はほとんど会わなかったことを思えば、ずいぶん親しくなったと思う。
綾乃と別れて以来、会うときはふたりきりだが、大澤があの時の話を蒸し返すことはなく、会うたびに変わる祐樹の彼女の話をおもしろそうに聞いている。
「そんなことより、先輩はどうなんですか?」
「ああ、まあなんとか。ほどほどに仲良くてそれなりにケンカもするって感じだな」
以前会った彼女と大澤はまだ続いていた。そんなに長く付き合ったことのない祐樹には、ふたりの関係がうらやましい気もする。
「結婚とか考えちゃったりします?」
「するわけないだろ。まだ学生なのに。まああっちは社会人になったから、前より会いづらくはなったな」
短大卒の彼女は大澤より一足先に、この4月から社会人になっているのだ。
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