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第14章 欲望のありか

 二部屋あるうちの奥の部屋には一度も入ったことがなかった。  引き戸の向こうは4畳半の狭い和室だったが、置いてあるのはセミダブルのベッドだけだ。  大澤はTシャツとボクサーパンツだけでベッドに座り、腰にバスタオル一枚巻いただけの祐樹を向かい合わせで膝のうえに座らせた。  当然、巻いていたバスタオルはめくれあがり、かなりきわどい有様になる。  上半身はなにも着ていない状態でするりと腕が回されてかるく抱きしめられた。  うつむくと大澤とちょうど目が合う角度で、目線をどこへやっていいかわからない。ひとりであたふたしている祐樹に、大澤がやさしくなだめるように笑いかけた。 「意外だな、祐樹がそこまで照れるなんて」 「…正直、女の子相手にするより緊張するし、恥ずかしいです」  いままでそういう意味で意識したことがない相手だからこそ、こんな状態で見つめ合っているのがいたたまれない。顔は真っ赤になっているだろう。 「ふうん? そんなもんか?」  大澤は気楽に言って、背中に回した手を下して祐樹の脇腹に触れてくる。なんてことない触れ方なのに、ざわざわと肌が粟立つ。  目をそらすと鎖骨にキスされた。  かるく押しつけて首筋をたどり、顎のさきに、耳の下にと誘いかけてくる。  観念した祐樹が目線を合わせると、そっと唇を重ねてしっとり舌を絡められた。口腔を舐められると背筋がぞくぞくして、逃げたいような気分になる。  そのあいだにも左手は祐樹の背骨をたどっていて、右手は脇腹から胸に撫で上げられる。くいと指の腹でちいさな先端に触れられて、びくっと腰が跳ねた。 「どう? 気持ち悪くないか?」  遠慮なく触れてきているようだったのに、そう尋ねられて気を遣われていたことに気づく。 「平気、です」  嫌悪感はなかったが、耳元に心臓があるみたいに、ばくばくとものすごい音を立てていた。 「声は抑えるなよ。気持ちいいとこ、探してやるから」  大澤の手が体中に触れてきて祐樹は息をつめた。  他人に体を触られるなんて何度も経験しているのに、女の子とするセックスとはまるで感覚が違っていた。

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