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第84話
大澤の家庭教師はいまも続いていた。
それなりに真面目に勉強しているおかげで、3年になってからもじりじりと成績は上がってきている。このまま頑張れば大澤の通う大学も狙えるかもしれないと、担任はほくほくしていた。
夏休み中はたまに大澤に教えてもらいながら、自力で勉強するつもりだ。
大澤との仲は相変わらずで、祐樹の学校行事や大澤のアルバイトの都合などで外で会うこともあるが、月に数回は大澤の部屋に通っている。
部屋に行ったときは勉強を終えたら食事をしてセックスするという流れができて、それがとても楽だった。
お互いに相手の体に慣れて、最初の頃よりも遠慮がなくなり、快楽を感じて楽しめるようにもなっている。そうかといって恋人というわけではなく、以前に比べて特別親しくなったというわけでもなかった。
セフレというほどドライではなく、恋人というほどべったりではない。大澤からつき合おうという言葉は出ないし、祐樹も大澤に恋愛感情は持っていない。
たまには映画に行ったり、外で食事もするが、あまい雰囲気とは程遠い男飯をがっつり食べて、さらっと別れる。これまで通り面倒見のいい先輩とわがままな後輩という関係だ。
いままでと変わらないスタンスで、祐樹も大澤も特定の彼女は作らないままで一定の距離を保ったつき合いが続いていた。
大澤が社会人になれば、こんなつき合い方が続くとは思わない。先に社会人になった彼女と別れたという話は、自分たちにも当てはまると思う。
もちろん大澤と祐樹は恋人としてつき合っているわけではないのだが、忙しい社会人になるだろう大澤が、後輩の祐樹と会い続ける理由も必要もない。
受験が終われば、もう家庭教師はいらなくなるのだ。もとの先輩後輩に戻ればまた、年に数回、きっかけがあれば会うという間柄になっていくだろう。
それにいまの関係は、祐樹にとっては安心できる相手に心地よく甘やかしてもらっているという状態だが、大澤にとってメリットはないと祐樹にだってわかっていた。
たぶん祐樹の受験が終わって大澤が大学を卒業するまでの、期間限定の関係なんだろうなと祐樹はぼんやり思っている。
ゲイじゃない大澤にいつまでも甘えて寄りかかっているわけにはいかない。そのときが来たら、きちんと終わりにしなければ。
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