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第85話
ふしぎなことに、東雲とのつき合いも切れなかった。
祐樹から電話したことは一度もないが、東雲からはごくたまにアルバイトに呼ばれたり、ドライブしようと誘いがかかる。
高校2年の2月には梅を見ようと誘われて偕楽園まで行き、見事な梅の庭園を堪能した。3年生になってからは6月の鎌倉にアジサイを見に行き、10月には紅葉を見に奥日光まで出掛けた。
東雲とのドライブは楽しかった。10歳も年上の東雲相手に自分を繕う必要もなく、車という密室でも気詰まりにもならず、回を重ねるごとに祐樹には心地よい時間になっていった。
それが祐樹にとっていいことなのかどうか、よくわからずにいる。
大人の男性で余裕のある東雲のそばにいるのは居心地がいいが、これは恋愛感情とは違うと思う。
東雲に対してはこうなりたいという憧れのようなものもあるし、甘やかされたいという祐樹の気持ちを東雲が汲んでくれている部分もあるだろう。
「なんでおれを誘うんですか?」
奥日光の雄大な紅葉は見事の一言だった。
絶好のデートスポットだろうに、なぜ東雲は自分を連れてくるのだろう。黄色や赤でモザイク色の山の景色を眺めながら、祐樹はそう尋ねてみた。
「祐樹くんがかわいいからかな」
東雲のやわらかな微笑みでいたずらっぽくそんなことを言われると、おかしな解釈をしてしまいそうだ。
かわいいもきれいも祐樹は言われ慣れていて、今さらそのくらいでは照れないが、東雲から言われると特別な響きを探してしまうのはどういうわけなのか。
「でも、もっとかわいい女性が東雲さんの周りにはいっぱいいるでしょ?」
「そういう人は誘うとあとが大変になるから、祐樹くんと出かけるほうが気楽で楽しいね」
そんなことを言いながら、祐樹の髪をさらりと撫でたりもする。これはなにか誘いかけられてる? それともおれが自意識過剰なだけ?
自分の性癖を自覚した祐樹は、東雲の行動をつい深読みしてしまう。
東雲はいつもごく自然に祐樹の肩や髪に触れるので、さわり癖があるのかもしれない。どうやら子供だと思われているようだし、とくに意味はないのだろう。
そう思ってもなんとなく心がざわざわとするのだ。
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先日、思い出したのですが、本編の「あの日、北京の街角で」をコンテストにだしておりましたww
まだ投票期間なので、ぜひご覧くださいm(__)m
https://fujossy.jp/books/16798
もしかして、ここから読んでる方もいらっしゃるかな?と思って。
本編はこのお話から7年ほど後の祐樹のお話ですが、よろしくお願いします!
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