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第88話

「祐樹は何人か彼女いたみたいだけど、男もいける?」  核心に触れてくる質問に、はいと答えた。大澤以外にじぶんの性癖を打明けるのは初めてだ。 「どっちかというと女の子が苦手みたいで…」 「それはラッキーだな。……どう、俺とつき合わない?」 「あの、…時間ください」  即決できなくて逃げを打ったのに、東雲は余裕の笑みでうなずいた。 「さっきも言ったけど返事はまた今度でいいよ。…そうだな、受験が終わったらまたドライブしようか」  受験が終わったら、という言葉に驚いた。  それだと年明けどころか、来年の2月や3月ということになる。時間くださいと言ったものの、そんなにゆっくり待ってくれるのか。  祐樹としては1,2週間のつもりだったのだ。 「え……、いいんですか?」 「最初から即オッケーが出るなんて思ってない。むしろもう会わないって言われるかもって覚悟してたから」  東雲みたいな人でもそんな覚悟で告白するのかと驚いた。しかも相手は自分だ。東雲から見たら10歳も年下の子供相手なのに。 「それにさすがに高校生とつき合うのはまずいかなっていうのはあるよ。卒業まで待つつもりだけど、とりあえず告白はしておきたくて。祐樹はそれで構わない?」 「…はい、すみません」 「謝らなくていいよ。急ぐつもりはないからゆっくり考えて。って受験生によけいな負担を与えちゃった?」 「そんなことないです。…東雲さんはおれの憧れというか、お手本にしてた人なんで、うれしいけどちょっとびびってるというか」  お手本?と東雲が首をかしげたが祐樹は説明しなかった。それより早くぐうっと祐樹のお腹が盛大に鳴ったせいだ。 「昼、過ぎてるな。とりあえず食事に行こうか」  ぽんと肩に手を置かれて、そのまま肩を抱いたまま歩き出す。  案外強引なのはもう知っていたけど、こういうことをされるのも嫌じゃない。  このまま東雲を好きになれるだろうか?  東雲とつき合うことになるのか、まだよくわからなかった。憧れているし、人となりを好きだと思うが、果たしてこれは恋愛感情になっていくのか。  同性と寝るのに抵抗がないことはもうわかっているが、異性と恋愛感情をはぐくめなかった自分が、同性と恋愛できるか祐樹にはあまり自信がなかった。  でもそんな祐樹でも東雲は受け入れてくれそうな気もする。肩におかれたしっかりした手を感じながら、祐樹は深く息を吸いこんだ。

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