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第100話

 卒業式が終わって体育館を出ると後輩たちが待っていて、卒業生に花や記念の品を渡すグループがあちこちにできていた。  部活に入っていなかった祐樹には誰も来ないだろうと思っていたが、王子さまには崇拝者がいたらしく、数人の下級生が花を持って待っていてくれた。  照れくさいような恥ずかしいような気持ちでそれを受け取ってありがとうと王子さまの微笑みを浮かべて礼をいうと、下級生が真っ赤になった。 ずっと憧れていましたと言われて、嫌悪感などはなく、ただくすぐったく思った。  体育館では恒例のお礼イベントが始まったようで、大きな笑い声が外まで響いてきた。  大澤の卒業式で壇上に呼ばれて、大騒ぎのなか頬にキスしたことを思い出す。あのとき、大澤はどんな気持ちだったんだろうと、いまになって思う。楽しい高校生活だったと、晴れ晴れした気持ちでいたんだろうか。  あれから4年が経って、きょうは自分が卒業すると思うとなんだか時間の流れがうまくつかめなくて、足元がふらつくような気がした。 「祐樹、写真撮ろうぜ」  振り返ると、数人のクラスメイトがカメラを振って呼んでいた。  そばに行って、一緒に並んで笑顔をつくる。となりで肩を組んでいるのは、背の高いしっかりした体格のクラスメイトだ。こういう雰囲気がけっこう好きだな、と心ひそかに思っていた相手だった。  6年間も一緒に机を並べたのに、本音を言うことも気持ちを打ち明けることもできなかったクラスメイト達。  臆病で自信のない祐樹は、王子さまの仮面をつけて乗り切るしかここで過ごす方法を見つけられなかった。  でもよく頑張ったよなと、祐樹はスーツ姿の両親がにこやかに笑いあう姿を視界に入れながら、卒業式のあいだに思ったことをもう一度思い浮かべた。  この3年間楽しいこともあったが、つらくて苦しいことが多かった気がする。でも時間が経てば、それもぜんぶひっくるめて思い出になるんだろう。  いつか、懐かしく思う日が来るのかもしれない。  これもほどよく憂鬱な日々だったな、と。  完 次のページに番外編ありますので、ご覧くださいませww 大澤のお話です。 さてさて、最後までおつきあい頂き、ありがとうございました! 祐樹の中学高校時代は、けっこう暗めのお話なので、楽しんでいただけるか心配だったのですが、いかがでしたか? 好き嫌いが分かれる話かもしれません。 祐樹は基本的に受け身で憶病なので、東雲や大澤みたいにぐいぐい引っ張ってくれる人と相性がいいんだなと再確認したお話でしたね。 まあ、こんなことがあって、孝弘と出会ったんだなってことで(^_^;) よかったら、感想を聞かせてくださいねm(__)m 東京・香港編の続編、遠距離(仮)の日々、連載開始しますw https://fujossy.jp/books/19976 こちらもぜひ、ご覧ください。 2020.11. 26 ゆまはなお

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