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真は力仕事とか牽制要員として期待してたんだけど、創作紙芝居の色塗りしてもらったらめちゃくちゃうまくて驚いた。 性格不器用なのに左手で筆持って、迷いなくパパッと塗っていく。 俺、真のことあの日にソッコーあきらめたんだけど。 だって無理だろ、俺最悪だろ。 なのに真は、俺のことなにも気にしてないカンジでサークルの集会室に来た。 なんでなの。 そう言えば、自分を捨てた彼女の名誉を守ろうとしたヤツだった。 俺の悪さは置いといて、俺の名誉を守ろうとしてくれた。 時すでに遅しだったけど。 真のためにイイコトまだしてないのに、俺のコト守ってくれた。 「ねえ、真は俺みたいに遊びで付き合って相手を捨てるよーなヤツのこと、嫌いだろうなって思ったんだけど」 紙芝居に色塗りしながら聞いてみる。 真、曲がったこと嫌いだろ? 腹立つコト言った賢一を殴るレベルで。 「妃は、すぐ人を殴る俺のこと嫌いじゃないの?」 真は質問に質問を返してきた。 「だって俺のために怒ったんでしょ、むしろありがたいから」 手遅れだったけど、本気でやめてと思った賢一の言葉を止めようとしてくれた。 ホントありがたかったから。 質問に答えたら、真も質問に答えてきた。 「俺は子どものために手描きで紙芝居作るヤツのこと、嫌いにはならない。俺、妃好きだよ」 ……好き? 好きってたぶん、俺の気持ちのほうだよ? このあいだ振り切れて、今こうして会話してて、自覚した。 頼れる容姿。 真面目な顔立ち。 器用な手先。 きっと一緒にいるだけで安心できる。 セックス抜きで信じられる。 いつか解放される。 そんな気がする。 真はそういうの、絶対俺に思ってないでしょ。 自分が救われたくて自分最優先で男に抱かれまくって、優しくてくれた男を捨てて放置した。 俺は最悪なヤツだよ。

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