7 / 28
6
真は力仕事とか牽制要員として期待してたんだけど、創作紙芝居の色塗りしてもらったらめちゃくちゃうまくて驚いた。
性格不器用なのに左手で筆持って、迷いなくパパッと塗っていく。
俺、真のことあの日にソッコーあきらめたんだけど。
だって無理だろ、俺最悪だろ。
なのに真は、俺のことなにも気にしてないカンジでサークルの集会室に来た。
なんでなの。
そう言えば、自分を捨てた彼女の名誉を守ろうとしたヤツだった。
俺の悪さは置いといて、俺の名誉を守ろうとしてくれた。
時すでに遅しだったけど。
真のためにイイコトまだしてないのに、俺のコト守ってくれた。
「ねえ、真は俺みたいに遊びで付き合って相手を捨てるよーなヤツのこと、嫌いだろうなって思ったんだけど」
紙芝居に色塗りしながら聞いてみる。
真、曲がったこと嫌いだろ?
腹立つコト言った賢一を殴るレベルで。
「妃は、すぐ人を殴る俺のこと嫌いじゃないの?」
真は質問に質問を返してきた。
「だって俺のために怒ったんでしょ、むしろありがたいから」
手遅れだったけど、本気でやめてと思った賢一の言葉を止めようとしてくれた。
ホントありがたかったから。
質問に答えたら、真も質問に答えてきた。
「俺は子どものために手描きで紙芝居作るヤツのこと、嫌いにはならない。俺、妃好きだよ」
……好き?
好きってたぶん、俺の気持ちのほうだよ?
このあいだ振り切れて、今こうして会話してて、自覚した。
頼れる容姿。
真面目な顔立ち。
器用な手先。
きっと一緒にいるだけで安心できる。
セックス抜きで信じられる。
いつか解放される。
そんな気がする。
真はそういうの、絶対俺に思ってないでしょ。
自分が救われたくて自分最優先で男に抱かれまくって、優しくてくれた男を捨てて放置した。
俺は最悪なヤツだよ。
ともだちにシェアしよう!