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久々に落ちてる。
きっかけは図書館ボランティアに行ったとき、翔麻の母親が翔麻置いてって腹立ったから。
でもそれ、ちゃんと母親帰ってきたし深刻でもなさそうだったから、そんなに心配してないはずなんだ。
なのに、落ちて落ちて落ちて落ちて、上がれない。
セックスできる相手がいない。
今度落ちたら気力で乗り越えようと思ってた。
無理だろうなとも思ってた。
真がいれば落ちないかもって楽観もしてた。
自宅のリビングで、真がソファで隣に座ってる状態で、落ちて、落ちて、身動きが取れない。
「元気ない。どうしたの?」
真はシンプルにそれだけ聞いて、せかさずに俺を待ってくれている。
俺もなんでこんなに落ちるのか、自分でもわかんない。
わかんないけどセックスすれば元に戻れるのだけは知ってる。
それしか知らない。
不安から解放される手段がまだわからないから、
今回は仕方がないから、
真に抱いてって、言ってしまおうか。
「不安なんだよ」
説明したかった。
性欲まみれで抱かれたいわけじゃない、って。
「俺も子どものころ、いや、今もか。母親仕事でほとんど家にいなくて」
理由があって、どういうわけか抱かれることしか解決の手段がない。
ホント、どういうわけだよ。
他に方法ないのかよ。
「翔麻が俺みたいな思いしてたらヤだし、あの母親、すごい腹立つ。俺の母親は仕事ないときは放置とかしてない」
説明じゃなくて、いいわけだ。
真に抱かれたいけど、見損なわれたくない。
今までエロいこと、好きだからやってたんじゃなくて、理由があったから。
だから許してって。
「優しいな、妃は」
真の相槌に、ハッとした。
真は俺を好きで、
俺は真が好きなはずなのに、
今からなにをしようとしてるの。
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