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「ごめん違う、俺優しくない。こういう気分にさせられると不安になるから、やめてほしいだけだ」 優しさなんて皆無だよ。 真をよごそうとしてる。 抱かれたら、真を信用できなくなる。 俺が一瞬楽になるだけで、真にはなんの得もない。 「中学入る前まで俺、母親と外国転々としてて」 でも。 真、俺がバイクに乗ってもホントになにも気にしなかった。 よごしてなんかいない、手も洗ってた、きたないところはふれてない。 あれからカラダも何度も洗ってる、もうなにも残ってないはず。 「母親家にいないからヘルパーみたいなの頼んでて、一回最悪なのに当たったんだよ」 俺のカラダで性欲満たしてるって、俺が思い込まなければ大丈夫かも知れない。 真は俺とセックスしたいなんて思ってないんだから。 真は俺を性欲満たすために利用しない、優しさが先、大丈夫。 絶対に大丈夫、終わっても俺はそんな心配しない。 「叩いたり蹴ったりすんだけど、親に言ったら親が困るとか言うから、親には黙ってたんだけどさ」 そこで真は、つらそうに目を細めた。 同情してほしいわけじゃないんだ。 ただ、俺の頭の中を理解してほしいだけ。 「親以外の大人がさ、俺の裸見て怪我してるって、……助けてくれたんだよね。そっから先、なんかのきっかけで不安になるし、裸見せると安心する思考回路になるし」 セックスするのはこれのせい。 遊びたいわけじゃ、ない。 「裸でからむの、俺にとっては好きだからすることじゃなくて、不安を解消するために他人を利用してるだけで」 真は俺を性欲満たすために利用なんかしないのに、俺は今から真を利用しようとしてる。 けど、しないと、つらい。 我慢しても、長引くだけ。 今不安すぎて。 安心したいから、 セックスすれば不安を忘れることができるから、 今日だけ俺を抱いてほしい。 頭の中でセリフを考えて口を開いたけれど、 言葉が出なかった。 真の顔を見たら、思考が止まった。 本能が、思考を許さなかった、みたいな。 かわりに、中途半端に浮かんだ言葉が口をつく。 「でも、真が好きだから」 だから、なんだよ。 許して、助けて? 言葉の止まった俺に、真は心配そうな表情で静かに聞いてきた。 「妃は俺のこと、怖くはないの?」 なんだろう。 前にも真、脈絡のないこと言ってきた。 俺が抱いてもいいかって。 「全然。なんで急に、そんなこと」 よくわからないけどあのときみたいに、踏み外した場所に真が待ってるような感じがした。 「俺も、叩いたり蹴ったりする人種だから。昔を思い出したり、しないのかと思って」 昔。 なにかされる物理的な痛みと、攻撃的な意志を向けられることの精神的な痛み。 反撃しようと思えばちょっとくらいならできたけど、親を盾にされてどうにもできなかったいら立ち。 一人で抱えて、さみしかった。 「あ、れ? そうだ。そういうのは、ムリだ」

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