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第21話

泣いている僕に、石井先生は大きな溜め息を吐いて 「ごめん。相楽君をきみから遠去ける為に、俺が彼を深く傷付けてしまったんだ」 と、石井先生が呟いた。 「え?」 僕が驚いて石井先生の顔を見ると 「今から話す話は…相楽家でもごく一部しか知らない話なんだ。きみの出生にも関わる話だけど、聞く勇気はある?」 そう聞かれて、僕は大きく頷いた。 すると石井先生は、僕の前に椅子を持ってきてゆっくりと話し出した。 「僕の番が那月なのは知っているよね?」 そう言われて頷くと 「元々、相楽の家に入るのが那月だったのは前に話たと思う。表立っては、那月が逃げ出して葉月が相楽の家に入った事になっているけど…、本当は違かったんだ」 石井先生はそう言うと、重い鉛を吐き出すように 「俺も最近まで知らなかったんだけど、どうやら葉月が相楽亮介…当時の相楽家の当主を寝取ったらしいんだ」 そう呟いた。 「えぇ!」 驚く僕に 「きみは相楽亮介と会ったのは、あの葬儀の日が最初で最後だろう?相楽亮介はモテる人でね。αなんだけど…なんていうのかな。物腰が柔らかくて誰に対しても優しい人だった。それに恭弥君を見てもわかる通り、相楽の血筋は容姿も良いもんだからね。とにかくモテていたらしいよ。那月はそんな亮介によく嫉妬したと話していたな。亮介は良くも悪くも、人を傷付ける事が出来ない人だったらしい。そんな優しさが仇になったんだろうな。……恭弥君の母親の敦子さんはね、亮介さんの実の妹なんだよ」 そう言われて、僕は呆然とする。 「催淫剤を飲まされたとか言ってたかな?那月は敦子さんに散々嫌がらせをされたらしくてね。亮介と関係を持った翌日に、那月の身体から彼の精子を採取された事もあったと聞いたな」 石井先生の言葉に、僕は血の気が下がる。 「体外受精するつもりだったんだろな。まぁ…結局、催淫剤飲ませて亮介を拘束して無理矢理妊娠したらしいよ。あの女の執念は凄まじかったらしい」 石井先生はそう言うと、 「亮介さんは、自分の妹をどうであれ妊娠させてしまった事に相当苦しんだらしい。そんな亮介に近付いたのが、葉月だ。それも運悪く……どうやら亮介と葉月が運命の番だったみたいでな。2人は急激に惹かれ合ったらしい。那月はそれに気付いて身を引き、葉月の存在に怒り狂った敦子さんが……まだ番になる前の葉月に薬で強制的にヒートを起こさせ、相楽の遠縁の男達で輪姦したらしい。で、葉月は誰の子かも分からない子供を妊娠させられたんだそうだ」 と話して、ゆっくりと僕の顔を見ると 「それがきみ……月夜君だ」 そう言い切った。 「そんな……」 驚愕の事実に呆然としていると 「その話を聞いて、きみが太陽と結ばれた日。相楽君はきみから身を引くと約束してくれたんだ」 石井先生の話しで、あの日、恭弥が急に僕から離れた意味を知った。 恭弥は……どんな気持ちでこの話を聞いていたんだろう。 恭弥の事を考えていると 「話はそれで終わりじゃない。きみは何も知らないが、亮介と葉月は10年前に自殺しているんだよ」 石井先生は驚きの事実をもう一つ、突き付けて来た。 でも……何となくそんな気はしていた。 いくら幽閉とはいえ、こんなに会えないのはおかしいと思っていた。 恐らく恭弥は、僕が僕の父親から男の抱き方を教わっていると思っていた頃、2人が既にこの世にいないのを伝えられたんだろう。

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