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第2話 盗っ人兄妹(4/12)

…と思ったが、その心配は不要に終わった。 捕まえたみたいだ、少年が首根っこを掴まれてアルに引きずられている。 「おー、お見事」 「こいつスリだぞ。こういうのには気を付けろって前にも言っただろ」 「離せ馬鹿! 離せって!」 じたばたと暴れる少年の頭を、アルが一発ゴツンとどつく。 「ぃっ…てぇえ―っ!!」 「暴れんな坊主! さっさと金返せ!」 「誰が返すか! あれは拾ったんだ、盗ったんじゃない!」 「人のポケットから拾う奴があるか!」 「まあまあ、もういいから、離してあげてよ」 「はあ!? 本気で言ってんのか?」 今にも噛みつきそうなアルに目でサインを送る。 最初は読み取ろうとさえしなかったが、やっと気が付いたようで、アルはかなり不自然に声を上擦らせた。 「ま…あー? お前がそう言うならぁ? 離してやらなくもぉ? ないかなー」 「だったらさっさと離せよ変態!」 少年がアルの手から強引に逃れて、さっきのお返しと言わんばかりにガッと足を踏みつけた。 「いってぇ!! いきなり恩を仇で返すな! てか変態ってなんだ!」 「男がんな耳つけてりゃ変態だろーが!」 少年が走り去りながら叫ぶ。 するとアルは、耳と尻尾の毛を逆立てて叫び返した。 「う、うっせー! これは自前なんだよ! 自前!!」 「お、おさえておさえて」 飛び掛かりに行こうとするアルを羽交い締めにしてユーベルが宥めていると、路地の先で少年が振り返って叫んだ。 「あとな、坊主じゃねーよ! アタシは女だバーカ!」 去り際にそう言うものだから、二人はぽかんとして顔を見合わせたのだった。

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