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第2話 盗っ人兄妹(6/12)

一瞬にして背後から羽交い締めに抱き上げられて、オルカの脳裏に苛立ちの元凶である聖職者コンビの姿が思い浮かんだ。 「うおっ!? 離せ! 今もっともされたくない体勢ナンバーワンはやめろ!」 「なんだそれ」 じたばたともがいても、元の体格に差があって、無駄な抵抗に終わってしまう。 「くっそー…」 諦めてぶらんと足を投げ出したところで、男の声が頭上から降りかかった。 「んで、今日は何があったんだ?」 「仕事のカモが変態だった」 「……うむ、さっぱりわからん」 「財布スッたら猫耳つけた変態男が追っかけてきたんだよ! 捕まってゲンコツ貰うわ、男に間違われるわ、腹の立つぅうう!」 宙に浮いたままひと暴れして、再びぶらんと手足を投げ出す。 ちょっと楽しいかもしれない。 「猫耳男ねぇ…」 「知ってんの?」 「いや、もしかしたらって思っただけだ」 「ふーん…でももっとムカつくのは、スッた方のヤツなんだ」 「ほお」 「変態と居た聖服のヤツなんだけど。無害そうな顔して人のことおちょくりやがってあいつ…っ!」 わなわなと震えていると床に足が着いて、どうやら解放されたようだとわかる。 「んまぁそれは置いといて。男に間違われない、いーい方法思い付いたぞ」 「えっ…」 俄な期待を胸にオルカが振り返ると、目の前に男の笑顔があった。 「おっぱい大きけりゃ、嫌でも女に見えるだろ」 はっはっはっと笑いながら、オルカの平坦な胸をぺすぺすと叩く大きな手。 「しっ…」 ぺすぺす。 「し?」 「死ね変態!!」 お手本のようなキレイな張り手が決まった。 間髪入れずにドタドタと荒々しい音を立てながら、オルカがアジトの外へ駆けていく。 「い、いいもん持ってるなあいつ…」 じんじんと痛む頬を押さえながら、男はよろよろと壁に手をついた。 すぐそばに見覚えのない財布が落ちていて、何の気なしに手に取って飄々と笑う。 「……ははーん、なるほどなぁ」 オルカが怒るのも無理はない。 財布の中には紙切れが一枚入っていて、その真ん中に大きく“はずれ”と書いてあったのだ。

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