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第2話 盗っ人兄妹(8/12)

「やー久しぶり! 元気だったか!?」 突然大声を上げたものだから、周囲の視線を一気に集める。 隣に居るユーベルさえ驚いたのだから、獲物に手を伸ばしていたオルカは余計に驚き、不覚にも肩を跳ねさせた。 「懐かしいなー、いつぶりだ? 10年くらい経ってるか!」 大きな独り言を続けるアルを横目に、ユーベルとオルカの目が合った。 やばい、とオルカが反射的に踵を返したところで、彼女の足が宙に浮く。 慌てるその首根っこを掴んだのは、ひょろっと背の高い金髪の男だった。 「おー、アル。久しぶりだなぁ、50年ぶりくらいか? てーか、うちのがヤンチャしてるみたいで悪ィな」 そう言うなり、突然現れたその男はオルカを軽々と肩に担いで、バシィ!と、大衆の面前で尻を叩いてみせた。 「ったく、カッとなって執着すんのはご法度だっていつも言ってんだろーが」 「きゃん!」 少女の口から悲鳴が上がる。 好奇の視線に晒され、屈辱に震えるその尻を、男は容赦なく二発、三発と続けざまに手で打った。 「いゃ痛ッ、痛い! ごめんなさい!!」 必死に許しを乞う少女と痛めつける胡散臭い男の図は、それを見ていた人々に不審感を抱かせるには充分だった。 誰が呼んだのか、すぐに自警団のエンブレムをつけた若者が駆けつけてきた。 「ちょっとちょっと! 何してんだそこ!」 勇み足でオルカと男に近付く自警団の青年に、アルが割って入った。 「あー悪い、騒がせて。ちょっとした兄妹喧嘩なんだ、すぐ静かにさせるから大目に見てくれよ」 冷静に事情を話し、この場を丸く収めようとするアルとは対照的に、尻叩きの刑を受けたオルカがわざと騒ぎ立てる。 「助けてぇ! 誘拐されるぅ! 犯されてバラバラにされて川に捨てられるぅう!」 金髪の男が舌打ち混じりに呆れた声を出す。 「てめ、恥じらいはねーのか」 「イヤ! 男三人で寄ってたかって、いたいけな少女を弄ぶ気なんだ! 助けてぇ!」 「あーもー、面倒なことになるだろが! 黙ってろバカ! 剥くぞ!」 カッとなった男がオルカのズボンを掴むと、彼女は途端に大人しくなった。 そして、しおらしく泣き真似を始める。 「鬱陶しいなテメー…!」 「おいお前! やっぱり怪しいな、話を聞かせてもらうぞ」 一連の流れを見てどちらとも判断のつかなかった自警団の青年は、その場に居た三人をひとまず連行しようと誘導を始めた。 一緒に来るよう腕を掴まれたアルが面倒くさそうにぼやく。 「えー、なんで俺まで…」 「うん? ちょっと待てよ」 自警団の青年が、ふと思い出したようにオルカを見た。 「君、さっき"男三人で"と言わなかったか?」

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