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第4話 バレンタイン(5/5) いちゃいちゃ

「ほら」 「え…」 アルの指につままれたチョコレートが、ずずいと唇に迫る。 「最初にお前に食ってもらわないと、くれたやつが報われないだろ」 「…変なとこで優しいんだね」 意外な一面に感心していると、口を開けるように急かされた。 照れを抑えて素直に従うと、指先のチョコレートが放り込まれて、口の中に甘みが広がる。 すると、待ってましたと言わんばかりにいただきまーすと発して、アルは自分の口にもチョコレートを投げ入れた。 「うん、うんまい! ところで遠慮する気ないけど、いいんだよな?」 「どうぞ。ていうか、好きだったんだね、甘い物」 「おう、甘い物は大体なんでも好きだなー。あ、これもうまい!」 嬉しそうにチョコレートを味わうアルの横で、ユーベルは包みの開封を続けた。 貰い物とはいえ、こうも笑顔で味わう様子が見られたのは役得だな、と頬が緩む。 「あんまり食べ過ぎないようにね」 「どうだろうなー、あれば食っちゃうな」 「だったら毎日ちょっとずつ手伝ってくれない?」 「それ、俺に毎日来て欲しいって意味でいいの?」 ユーベルの手が止まる。 「…あはは、そうだね。来てくれると嬉しいよ」 「…出た、天然」 ちょっとした照れで互いに口数が減って、早々にチョコレートの箱がひとつ空になった。 気が付いたユーベルが新しいものを渡すと、最初のひとつがまたアルの指によって運ばれてくる。 「あ…」 「先に一個食ってから渡してくれてもいいんだけど」 「うん、次からそうする。ごめんごめん」 そう言って手で受け取ろうとしても頑なに口に突っ込みたがるから、またか、と照れを押し殺しつつ諦めて口を開けた。 放り込まれたチョコレートを口の中で転がすと、アルの視線がやたらと絡み付く。 「…なに、じっと見て」 「ちょっと試してみたいことがあって」 そう言うなり、ユーベルの頬に手を添えたアルは距離を詰めた。 間髪入れずに顔を寄せて、油断していた唇の隙間に舌が入り込む。 「――!?」 呆気にとられたユーベルが逃げ出さないように、頭に指が這わされる。 ぐっと押さえ込んで触れ合う舌は、ぬるぬると温かくて、蕩けるように甘かった。 ぴちゃ、と音を立てて離れると、目元をほんのり染めたユーベルは大げさに顔を伏せた。 「…っ…、急に…」 「いまキスしたら甘いかなって思って」 「…試さなくてもわかるでしょ、甘いって」 「うん、甘かった」 「でしょうね…」 まともに顔を見られなくなったユーベルがぼそぼそと返すと、向けられたつむじを眺めるアルは嬉しそうに、へへっとはにかんだ。

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