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第8話 貴婦人の集い(7/7)

「ねえ、エレノア。アレ見てどう思う?」 「え? なんですか?」 ちょっとだけ後輩のエレノアが、汚れのない目で私を見る。 あれだよ、と視線で示す先に、クリスの肩に触れるユーベルが居た。 「どうって…何かついてたのですかね? クリス様がお礼を言ってらっしゃいます」 「…うん。そうだよね、私もそう思うよ」 「…? ステラちゃん?」 うそだ。 私にはもう、人と触れ合うのが苦手なクリスが、ユーベルにだけは触れられることを許してるって図にしか見えなかった。 つまり二人はそれくらい親密で、ともすれば… 「ステラちゃん!」 「ほあっ!?」 「大丈夫? 口がにやけてるのです」 「だだ大丈夫! ちょっと…思い出し笑いしてただけ!」 すっかり毒された私は、もう普通に司教の三人を見ることが出来なくなっていた。 完全に、マリーとフランにしてやられたのだ。 「あ。アルベール様」 「!?」 珍しいのですと暢気に言うエレノアを尻目に、眼光鋭く動向を観察する自分が居た。 猫の尻尾を揺らすアルは、クリスと何やら言い合って、お互いが不機嫌そうにして別れる。 「…っ!!」 そうか。 ユーベルとクリスの仲はフェイクで、表沙汰に出来ない関係を築く以上、人目につくような場所ではあえて仲が悪いフリを… 「!? ス、ステラちゃん! 鼻血! 鼻血出てます!!」 「えっ…えぇええっ!?」 私は完全に毒されていた。 それはもう、完全に。 そしてこれは後日談なのだけど、私は司祭の昇格試験に見事に落ちた。 三人のお祈りを無に帰した自分が不甲斐ない。 ちなみに原因は、誘惑を断ち切る煩悩の試験で、三人の…とても口に出せない幻を見たせいだった。 ―― 「はろーマリー。どう? お祈りネタは形に出来た?」 「ふっふっふ…じゃん! 書き終えたから部屋で読んでね!」 「さすがマリー! どんなところが見どころ? 知りたいわ」 「んんー? そうねぇ、やっぱり猫栗の『ちゃんと触れろよ』ってとこかしら。あ! でも逆パターンもあるよ!」 「逆パターン…ふむ。つまり『誰にでも本当にキスしてんじゃねーよ!』パターン?」 「ビンゴ!」 「やるじゃない私」 あはははっ、と二人が笑う。 そこに新しく加わったステラが、ぽそっと呟いた。 「お前だけにしかしないパターンも、アリじゃないですか?」 「「!!!」」 こうして、一人増えた仲良し三人組は、檻の外から彼らを眺めては美味しくご飯を食べながら、日々を楽しく心豊かに過ごすのだった。

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