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第10話 猫の迷い-後編-(16/20) ※R18
躊躇いのせいで焦らされたアルが期待で腰を浮かせると、ようやく恐る恐る指が触れる。
「ぁ、…っうん、…」
思わず口をついた声を、咳払いで誤魔化す。
観察するようにじっと見つめてくる青い瞳が羞恥を呼び起こす。
そっと握られた分身がゆるく扱かれて、もっとしっかり触れてほしい、ともどかしくて堪らない。
「っ…ぁあっ、ユーベル」
縋るような声で呼びつけられたユーベルは、楽しんでいるような笑みを浮かべて、浅く首を傾げた。
「はぁ、わざとか? んっ…わざと焦らしてんのか?」
「…ふふ」
短く笑ったユーベルが、アルに口付ける。
自分の手を、司教の手ではなく、ただの男であるこの手を、熱に浮かされて欲しがる猫の瞳が愛しくて仕方がない。
唇を食んでそっと離れる優しいキスとは裏腹に、掌をきゅっと握り込んで少し強めに扱き始めると、びくびくと、アルの背が反った。
「うぁっ、あっ…くっ、はぁ…っ!」
焦らされた分、待ち望んでいた快感が鋭く走って、頭上の耳がぎゅっとへたり込む。
見下ろしてくる青い瞳に情欲の火が灯る。
堪らず目を逸らすと、再び口付けられて、唇を触れ合わせたままユーベルが囁く。
「だめ、こっち見て…感じてる顔、ちゃんと見せて」
「うぅっ、お前っ、…んん!」
虚勢を張って睨んでも、ユーベルの顔は静かに恍惚としていて、アルの目にいやらしく映った。
思いもよらなかった変貌ぶりに翻弄されて、急速に追い詰められていく。
「んあっ、待て、やば…! イ、ッきそ…っ!」
アルの切羽詰まった声で、ユーベルは手の動きを緩めた。
肩で息をするアルに、額への慈しむキスをして、優しく問い掛ける。
「出さなくていいの?」
「っは…わかるだろ…」
残念がるユーベルが手を引っ込めると、アルは腰を抱き寄せて深く口付けた。
髪に指を梳き入れて押さえつけながら、何度も角度を変えて口内の熱さを貪る。
「ん…ふ、猫さ…っん…んぅっ」
ちゅ、ちゅと繰り返す内にユーベルの吐息に甘やかな鼻声が混じる。
主導権を握り返したアルが、ベッドに向かって肩を押す。
ギシ、と軋む音を背に、生成り色のシーツに青い髪が散って、組み敷かれた濡れた瞳が期待と不安で揺れる。
腕の下で見上げてくる、欲情して雄を見せる恋人。
星模様が変わるほどこの時を待っていたアルは、感慨深さから額にそっとキスを落とした。
「なぁ、聞きたいんだけど」
「…なに?」
「誰かと寝たこと、あるのか?」
「……」
じっと見上げていた青い瞳が泳ぐ。
暫く黙り込んだ後、見下ろすアルをちらりと見て、意味深に笑った。
「教えない」
「…ケチ」
ふふ、と笑うユーベルの口を、キスで塞ぐ。
アルの唇が頬から首をなぞるように滑って、首と肩の間にちゅ、と吸い付く。
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