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第11話 古傷(2/13)

「はい、お疲れさま。手伝ってくれてありがとう」 下拵えの手伝いを終えて食堂の隅で休憩するクリスに、ユーベルが淹れたての珈琲を渡した。 食堂の一番端のテーブルにはポットと飲み物が潤沢に用意されていて、誰でも自由に利用できるようにしてあるのだ。 「あ…すみません。ありがとうございます」 ユーベルから受け取った珈琲は、ミルクで程よくまろやかになっていて飲みやすそうだった。 二人とも紅茶を好むのに珍しいチョイスだ、と飲み物のテーブルを見たクリスの視線に、ユーベルが答える。 「あぁ、紅茶は切れてるみたい。あとで補充しておかなきゃ」 「そうでしたか。…なにも、ユーベル様が用意しなくても良いのでは?」 「ふふん…、自分好みの紅茶を置くチャンスでもあるんだよ」 「な、なるほど」 強かに笑うユーベルの好みの紅茶なら、より飲みたい。 そう考えるクリスの頬が密かに緩む。 その微笑みの意味に感付いたユーベルが、少し引いて話題を変えた。 「そ、そういえば、何か相談があるって言ってなかった?」 「あ、そうでした。あの、チョコレートのことなんですけど…」 「あぁー」 「減らないんです」 「だろうね…」 わかるわかる、とユーベルが頷く。 これは、どう見ても協力を仰げそうにない。 それでも一応、ダメ元で聞いてみる。 「手伝っては頂けないでしょうか?」 「ううーん…」 ユーベルが腕を組んで悩む。 一応悩んでくれる分、結果に期待できずとも嬉しい。 「…ご、ごめん…」 「ですよね、わかってました。」 食い気味に頷いて、はは、とお互いに乾いた笑いを零す。 そして二人して、はぁ、と溜め息をついた。 「…減りましたか?」 「多少ね…子供たちにあげたりしても、微々たるものだよ」 「ですよね。何か、こう、いい手立てはありませんかね。いっぺんに消費できる行事とか、どこかに送るとか」 「どこかにって…あ。」 ユーベルが何か思い当たったような顔をした。

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