3 / 59
第3話
元々勉強が得意だった俺と塁は、ここら辺では偏差値の高い高校に行けることになった。
寮のある高校で、俺達二人は寮生活することになった。
高校が始まってしばらく経ったけど、最初は寮生活できないってことだったから今日来るのが初めて。
寮生との顔合わせと寮生活についての説明を合わせたミーティング的なものを、食堂でやっている。
寮生活をする人は少ない上に男女で分かれているからか、全然人はいない。
「初めまして。寮長の鈴橋 伶桜 です。バース性はβです。今年度は4人が寮生活するんだよね。じゃあ、それぞれ自己紹介してもらってもいい?一応、バース性もお願いします。」
寮長の言葉に隣の塁が俺を突く。
どうせ悪巧みしかしてなさそうな塁を一度睨んだ上で耳を貸す。
「なぁなぁ、元ヤンです。っていうか?」
ほら、ろくなこといわねぇ。
もう一度睨みつけ軽く膝を殴る。
「いてっ!?」
「ん、どうしたの?」
不思議そうに寮長が塁を見つめる。
「あ、いや。何でもないです、すみません。」
塁が敬語を使えることに驚きながら聞いていると塁に睨まれる。
寮長はまだ不思議そうにしながらも、すぐに切り替えて横一列に座っている俺達に声をかけた。
「じゃあ、左側から。自己紹介お願いします。」
そう言われ、一番左にいた奴が立ち上がる。
こいつ…俺より背が高い。思わず睨みかける。
でも、塁よりは小さいからいいやと思い、代わりに右にいる塁を蹴る。
何となく蹴られると予想していたのか、塁は声を上げなかった。
「塩崎 梳羅 です。見た目はほぼβですけど一応バース性はαです。これからよろしくお願いします。」
ペコリと塩崎が頭を下げ、座る。
すると、すぐに隣の奴が立ち上がった。
「…色場 結斗 です。梳羅と幼なじみです。バース性はΩ…です。あと…Xジェンダーの中性です。……よろしくお願いします。」
そう言い、少し気まずそうに頭を下げて座った。
Xジェンダーの中性…。
周りに性的マイノリティーであることを打ち明けている人がいなかったために、打ち明けている色場に素直に驚く。
「次、お願いしていいかな?」
思わず黙り込んでしまい、寮長に声をかけられる。
「あ、すみません。長橋 雪希 って言います。バース性は…」
Ωです。そういいかけたところで食堂の扉が開いた。
そして、2人の人が入ってきた。
「悪い、鈴橋。遅れた。」
「遅すぎます…ごめんね。先に紹介します。この二人の先生は寮の責任者みたいな感じです。」
俺の自己紹介中に入ってきた二人の先生を見る。
…俺より背が高い。
まぁ、俺より年上だし仕方ないか。
寛大な心で許してやろう。
そう思っていたら片方が吹き出した。
何か嫌な気がして睨みつける。
すると更に笑い始める。
「如月 先生?どうしたんですか?」
「ごめっ…何でもない…っぷ…はっ…ちょ、一つ言わせて。」
爆笑しながらその如月とかって言われた先生は俺を指差した。
「小せぇな。」
「はぁ!?」
教師のくせに信じられない。
というか、俺はまだ成長期が来てないだけだっての!!
「俺は、小さくねぇ!!」
「嘘つけ、お前170ねぇだろ。最低でも175はねぇとチビだよ。」
冷たい笑みを浮かべて小馬鹿にしたように言う。
こいつ…!
確かに、俺の身長は167だけど??
うぜぇぇぇぇぇぇ!!
話終わってないけど話す気になれず座り込む。
というか、170なかったらチビってそんなわけねぇだろ‼
「如月先生、長橋君に失礼です。」
寮長が静かにアイツを宥める。
少し悪くなった空気をどうにかしようと、塁が立ち上がる。
「俺、長岡 塁 って言います。αです。隣の雪 とは幼なじみでーす。」
塁…てめぇも余計なことを…。
塁が俺を“雪“って呼んだのを聞いて如月はニヤニヤ笑った。
んだよ…こいつ。
「雪って言うんだ?」
流石に俺もその言葉にはキレた。
馬鹿にしやがって…!
「俺の名前は雪じゃねぇ!!雪希、せ・つ・き、だ!!覚えとけ馬鹿が!」
「へぇ…雪希、ね。…これからよろしく雪。」
だから、誰が雪だよ…。
しかも、これからよろしくってなんだ…。
ともだちにシェアしよう!