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第11話
「おはよ、雪希。」
「ん……」
如月に声をかけられ、目を覚ます。
ここって、如月の部屋か?
塁とかみんないないし。
「可愛かったよ。俺に弄られて簡単にイっちゃった雪希君?」
「っ……!!」
ぼーっとしていた俺に楽しそうに如月が声をかける。
すっかり忘れてたことを思い出して顔が赤くなるのが自分でもわかる。
「喧嘩のことはいい。そんなことより、なんで俺のフェロモンがお前に効かなかったんだ。」
如月は人を見下すのが好きなのか?
フェロモンが効こうが効かまいがどうだっていいだろ。
でも、俺はちゃんと約束は守る人間だ。
後々、今日のこと引っ張られてもめんどくさいし。
「……まだ発情期が来てないだけだよ。それだけ。」
事実を淡々と告げる。
そんなことより、なんで如月は俺がΩだって気づいたんだよ。
寮に入っての自己紹介で、俺は自分のバース性を言わなかったのに。
「そう……でも、そろそろ来るかもしれないな。俺が言うのもおかしいけど、気をつけろよ。Ωの奴の部屋は発情期でも外に匂いが漏れないようになってるし鍵だけじゃなくてパスワードも必要だし簡単に開けられないようになってるとはいえ…」
「わかってるよ、てかなんで俺がΩだって分かったんだよ。」
見た目はβっぽいってよく言われるし、なんなら発情期が来たことないから自分でもほぼβと同じじゃね、って思ってる。
Ωだってばれたのは如月が初めてだ。
「なんでって…どう考えてもΩじゃんか。まあいい。俺が結構フェロモン出したからもしかしたら発情期が来やすくなってるかもしれない。」
だったらあんなフェロモンだすな。
とは思いつつ、渋々うなずく。
実際、いつ来るかなんてわからないんだから。
「わかってくれたならいいよ。あと、俺の呼び方どうにかしてくれない?」
「呼び方?」
「如月はやめてくれない?」
呼び方…じゃあなにがいんだか…。
黙り込んで考える。
如月…輝だったはずだからコウ?
別に呼び捨てでいいだろ。
「コウ、でいい?」
「コウって…俺輝 なんだけど。しかも先生だけど…ちゃんと覚えとけ。」
不満そうに俺に文句を言う。
…輝なのは分かってるんだけど。
「覚えてるけど…コウでいい?それともなんか希望する呼び名でもあんの?」
「…ま、如月以外ならなんでもいいや。」
如月がベッドの側の時計の横に置いてあった煙草に手を伸ばす。
まさか、ここで吸う気か?
思わず睨みを聞かせると苦笑しながら俺の頭をくしゃくしゃと撫で回した。
「なっ、おい!やめろ!ぐちゃぐちゃになるだろうがっ!」
「もともとぐちゃぐちゃじゃねぇか。外で吸うから安心しろ。」
そういいながらコウは立ち上がり、部屋を出て行こうとした。
俺は慌ててコウの袖を掴む。
「ん。どした?」
「あ、いや。なんでもない。」
自分でもなんでコウを引き止めたのかはわからない。
でもなんとなく、今一人になるのは寂しかった。
そんな俺を見てコウは微笑んだ。
意地悪に笑うのでもなく馬鹿にするのでもなく、ただただ優しく笑った。
そしてそのまま――
「…ごちそーさま。そんな顔してると襲われるぞ。」
唇にキスをされた。
優しく、包み込むような――
って、俺は何を考えてんだか!?
早く反論しないと…
「なんっ…でキス!?」
「んー秘密?」
綺麗な二重をした目を細めて、コウはそういった。
馬鹿にするというより、楽しそうに。
そんなコウに少し見とれながら固まっていると今度は優しく俺の頭を撫でてコウが立ち上がった。
「部屋に鍵掛けれるから出るときかけてきて。これ、合鍵。あ、そうだ。雪希も部屋の鍵貰ったら合鍵頂戴。」
「は?なんで俺が――おいっ!?」
俺の文句を最後まで聞かずに、コウは俺の手に合鍵を押し付けてそのまま部屋を出て行った。
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