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第13話

足早に自分の部屋へと向かうと扉の前に梳羅が立っていた。 急いで扉を開けると中から結斗が飛び出してきた。 「どこ行ったのかと思った…」 「心配させんなよ、焦ったじゃんか。」 そんなに心配することか?と思いつつも、今まで塁からしら向けられなかった温かい言葉にくすぐったくなる。 「ごめん。ちょっと――」 色々あって。 その声は続かなかった。 自分では、何でかなんてすぐに分かった。 でも、これ以上こいつらに迷惑をかけたくなくて必死になって笑顔を作った。 「そーいや、そろそろ朝食だって。先行ってて。ちょっとやんないといけないことがある。」 何とか声を絞り出す。 変に思われてはないか…? いや、変に思われててもいいから一回一人にしてほしい。 「そか、わかった。じゃ、先行ってるねー。」 陽気な結斗に連れられて梳羅と塁が部屋を離れていく。 塁は長年の勘か、俺を心配そうに見つめたが俺は素早く首を振った。 【なにかあったられんらく】 口だけでそう伝えてきた塁に頷き、塁はそれを見て少しだけ安心したように部屋を離れて行った。 あとは、俺が自分の部屋に入るだけ。 大丈夫。目の前だ。 震える手で自分の部屋のドアを開ける。 あとは、ドアを閉めて鍵さえかければ―― 「雪希、朝食の時間だけど。」 「…コウ」 もう、まともに話なんかできないから。 首だけ振ってドアを閉めようとする。 すかさず、コウが体でドアを止める。 「茶化しすぎたなら悪かった。だけど、朝食はちゃんと取れ。体に悪い。」 わかってる。 でも今朝食を食べに行って誰かと話せるような状況ではない。 俯いたまま返事をしない俺を不自然に思ったのか、コウがしゃがみ込み俺と視線を合わせる。 「雪希…?」 俺は一言も発さず、そのまましゃがみ込んだ。 いや、一言も発せなかった。 「雪希、俺の部屋行けるか。」 俺の異変に気付いてコウが優しく手を握って俺にそう問いかける。 俺は弱々しく首を横に振る。 「…聞き方を変える。俺の部屋に、移動してもいいか?」 少しだけ考え、頷く。 多くの人にこの姿を見られるよりましだし、このままだと塁たちが帰ってきたときに大騒ぎになる。 それだけは食い止めたかった。 「わかった。俺に寄りかかって。」 コウの言葉に従い、コウに寄り掛かる。 どうやら俺はもう限界だったらしく、そのまま気を失った。

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