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第21話
「…雪希、かな。」
「はい。波飛さん、お久しぶりです。」
周囲を軽く見渡すが、周りには誰もいなさそうで安心する。
もちろん、ホクもいない。
「どうしようか、ここでもいいけど。俺の家のほうがいいかな。発情期は大丈夫?」
「まだ来てないんで大丈夫です。後は、波飛さんがいいなら…」
そう返事をすると、波飛は俺の手をつかんで走り出した。
こういう時ヤンキーならバイクじゃないかって昔、話したことあるけど波飛さんはルールを守る人だったな。
だからこそ、色んな人に慕われていたわけで。
「何年振りだっけ、それでも一年ぶりくらいか?」
「そうですね、俺が喧嘩から足を洗ってすぐはあってましたけど、勉強したりしてたんで段々会ってなかった気がします。」
一年も会わないとよそよそしくなっちまうもんだな、と笑う波飛さんに懐かしさを覚える。
波飛さんは変わってない。
塁には伝えたほうがいいってずっと言われたけど、波飛さんには俺とホクとの間で何があったかを伝えなくてよかった。
雑談したり、そんなことを考えながら走っているとなんだかんだですぐ波飛さんの家に辿り着いた。
「入って。俺の部屋行ってて、位置変わってないから。」
俺は、お茶を取ってくる、という波飛さんの言葉に頷き台所に向かう波飛さんを横目に階段を上がる。
「失礼します。」
波飛さんの部屋に入るときは必ず言う。
波飛さんは言わなくていいっていうけど、まぁ癖みたいなもんだ。
壁にあるコルクボードに写真が貼られてたりと波飛さんの部屋は全然変わっていなかった。
ふと、壁の写真に目が行く。
「こ…れ…」
波飛さんと塁と俺…それからホクの四人で撮った写真を見つける。
波飛さんは写真を撮るのは好きだけど、撮られるのは嫌いな人で自身は全然写真に写ろうとしなかったからこれが四人で撮った唯一の写真だ。
まぁ、俺も撮られるの嫌いでほとんど映らなかったけど。
「懐かしいよな、その写真。」
ふと、後ろからかけられた声に思わず震える。
なんで…
「ほ…く…」
なんでこいつが、波飛さんの家にいるんだよ…
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