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第22話

「久しぶり、ユキ。元気だった?」 誰かさんのせいで、まったく元気じゃねぇよ。 一瞬そう言ってやろうかと思ったが、結斗の方が大切だ。 ここは、穏便に済まそう。 「あぁ。」 「お待たせ。あれ、北斗部屋いるんじゃなかった?」 波飛さんが不思議そうに北斗に尋ね、北斗は「まあね。」と答える。 「ま、いいや。北斗、邪魔すんなよ。」 俺的には、ホクがいることが怖くて嫌なんだが。と思いつつ、波飛さんは何も知らないわけでそんなことは言えない。 ホクは少し黙った後、「わかった。」とだけ言うと床に座った。 どうやらここに居座るらしい。 「…今日、波飛さんに会いに来た理由は情報が欲しかったからなんです。」 「ん、何の?」 情報、と言われパソコンをすぐ開くあたり波飛さんはやはり頼りになる。 ホクは波飛さんが運んでくれたお茶をコップに注ぐと俺と波飛さんの前に置いた。 邪魔をする気はないらしい。 「結斗、っていうんだけど俺の高校の友人が行方不明なんだ。結斗を連れ去ったと思われる人が高緒嶺っていうんだけど。高2らしい。どこの高校かまでは知らないし、高校行ってるかもわかんないけど。」 「おけ。俺は持ってる情報ないから聞いてみるな。」 そういうと、波飛さんはカタカタと文字を打ち始めた。 打ちながら波飛さんは結斗について細かく教えてくれ、と俺に言った。 「結斗は…」 言っていいのかはわからないけど、でも波飛さんなら大丈夫。 ホクにも聞かれるけど、秘密にしてほしいことはちゃんと守るタイプだったから大丈夫だろう。 今も、変わってないと信じて。 俺は、結斗がXジェンダーの中性であること。 Ωであり、親から主に精神的な虐待を受けていたこと。 去年、幼馴染の高緒嶺にレイプをされたこと。 そして、その出来事のことを忘れてしまっていること。 「わかった。…んっと、情報集まったりしたら俺が行っても平気?ちょっと…ね。」 少し含みのある言葉だったが、最近喧嘩もしてない俺が行って大丈夫なのかが不安で任せることにした。 「お願いしていいですか。」 「じゃ、ユキは今日お泊りだね。」 楽しそうに、ホクがそう言い俺は静かに首を振る。 用事がある、そう言おうとしたが波飛さんに止められる。 「泊っててくれ。」 波飛さんにそう言われ断るにも断り切れない。 戸惑っている間に、波飛さんは支度をして家を出ていった。 この家にいるのは。 Ω()α(ホク)だけ。

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