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第25話(※)

コウの名前を出してからホクが苛立っているのが分かった。 だから怖くて、何も言えなくなる。 「…だんまり?塁じゃないんだ、名前呼ぶの。」 あの日のことを言っているのはすぐにわかった。 あの日――俺等がホクに裏切られた日。 俺は四六時中、塁の名前を呼んでいた。 「誰でも…いい、だろ…」 俺がすべてを忘れていることを知った時の、塁の表情を思い出す。 どうするべきか悩んで、苦しそうにしていた塁を。 もうあんな風に、誰かを巻き込みたくない。 ホクが狙ってるのが俺なら、俺だけ傷つけばいいだけの話―― 「よくない。ユキは俺のお嫁さんになるんだよ。俺以外を名前で呼ぶなんてダメ。例えそれが塁でも、波飛でも。…ましてや、俺の知らない人なんてね。」 ホクの言葉に息を吞む。 まさか、本気で言っているのか…? 「…ホク。」 「でも、いいよ。今日はとびっきり気持ちよくしてあげるから。何があっても俺のことを忘れないように。」 そういうや否や、ホクはまた素早く腰を動かし始めた。 薬の回り切った敏感な体は、嫌だと思う心とは反対に快感を追い続ける。 「やっ、ホク…もっ、やめ」 「ん?雪希説得力ないなぁ…一緒になって腰動いてるのに。」 気持ちいなら素直に言おう? 素直になったら俺、もっと雪希のこと気持ちよくできるから。 こういう時に❛ユキ❜じゃなくて❛雪希❜って呼ぶところホクは怖い。 でも、気持ちよくなりすぎてあの日みたいに気絶すればいいと思う自分もいて。 憎くて仕方ないホクに甘い声をかける。 「きもち…いい。…もっと、して」 「ん。よくできました。」 にこっと満面の笑みを浮かべて微笑んだホクが俺の前立腺を執拗に攻めながら甘ったるいキスをしてくる。 「あっ、あっ、ごわれる、むりっ、あ、あっ」 「無理じゃないよ。気持ちよくしてっていったのはユキだからね、俺のこともちゃんと気持ちよくして?」 快楽から逃げようとした俺の腰を力強く掴んでがっちりと固定する。 涙で霞んだ視界の先にホクの顔が見える。 ホクはただ微笑んでキスをする。 大切にされているような感覚に陥る。 途端に大きな快感が押し寄せる。 「ま、て、いく、いぐ、おね、が、とまって…こわ、い。たすけ、」 急な感覚に不安になってホクに助けを求める。 でも、ホクはなんでもなさそうに返事をする。 「いいよ、何回でもイこ。」 そして変わらず動き続ける。 そのまま耐え切れず達した俺は。 諦めて全ての力を抜いた。 ――意識まで。

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