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第29話

「少しは落ち着いたか?……これココア。」 俺が少し落ち着いてきたのを見て、コウは一旦俺から離れココアを持ってきてくれた。 うん、と静かに返事をしてコウの方を見る。 コウは目の下にクマができてて疲れてるのが分かった。 「…コウ、寝てないの?」 「心配してたら悪いか。」 コウは苦笑いしながら俺のほっぺをつまんでそういった。 「ごめん。あと、ありがとう。」 心配をかけてごめん。 助けに来てくれてありがとう。 言葉足らずだけど、コウは理解してくれてニコっと笑った。 ふと、気になっていたことを思い出して口を開く。 「そういえば…どうやって波飛さんに会ったの?」 あぁ、とコウは聞かれるのがわかっていたように話し出した。 「長岡にさ、『雪希がちょっと先輩に会いに行くって言って出かけたから変に心配するなよ。』って言ったら真っ青になって『先輩って…波飛さん!?』って言われて。雪希、名前までは言ってなかっただろ?先輩の。だからわかんねぇけどって話して。」 俺がそこで早く気づいてればよかったんだけど。 そういうとコウは下を向いた。 「気づくも何も、コウに波飛さんの話したことないからわかんないでしょ。」 「いや、気づけたはずなんだよ。なんとなく、人と距離を取ってるお前が『返せっ!!』って必死になるようなプレゼントをくれた人なんだから…」 初めて寮に来た日の話をしてることはすぐに分かった。 そんなこと覚えてたんだ… とにかく、とコウは話を続ける。 「その日の夜遅くに、長岡に電話があってそれが坂妓からだった。……坂木は『雪希に頼まれてた結斗、見っけたよ。』っていうシンプルな電話だったんだけど、長岡はそれが頭に入らないくらい動揺してて。俺は長岡と電話を代わった。」 最初はめっちゃ警戒されたよ、とコウは笑う。 そりゃそうだ、波飛さんはここら辺のトップだし変に情報流されたりしたら困るしな。 それでも、波飛さんとコウが一緒にいたってことは話ができたってことなんだろうけど… 「警戒されすぎたからどう切り出そうかって必死に考えてまぁ、とりあえず自己紹介して…って、ここはいいか。俺が戸惑ってたら長岡が少し迷いながら俺と電話代わって話をしたんだ。もちろん、長岡の声しか聞こえないけど。…長岡が伝えたんだ、坂妓に。雪希に何があったのか。」 俺は息を吞んだ。 普通に考えたら、塁しか伝えれる人はいないからわかってるつもりだったけど。 塁は言わないんじゃないかって思ってたから。 俺が、毎回必死になって止めたから―― 気づかぬ間に眉をひそめていたらしい。 コウは俺をなだめるように口を開いた。 「長岡は、ずっと苦しそうだったよ。それは多分…本人じゃないのに話していいのかっていう思いだと思う。でも、長岡のおかげで俺は坂妓のところに行けたし雪希を助けられたから…」 「…わかってる。わかってるんだけど、塁をまた苦しめちゃったなって。」 もう塁にあんな顔させたくなかったのに…

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