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第30話

「雪希が、喧嘩について話したがらなかったのは北斗ってやつがやっぱり関係してる?」 思い出したように口を開いたコウにうなずく。 塁以外には伝えてなかったけど、コウもほとんど状況わかってるなら話した方がいいよね。 「俺…と、塁が喧嘩初めて暫くたった頃に二人とも別で怪我してた時に絡まれたからボコボコにされてたことがあるんだけど。『怪我してる奴らにしかオメェらはいけねぇのか、情けねぇな。』って言って相手のことぶっ飛ばしてくれたのが波飛さんだったんだ。最初は、助けられて悔しかったんだけど普通に話してるうちに打ち明けてきて。」 あの日のことを思い出しながら話し出す。 俺らのこと結局なんで助けてくれたのかって聞いても、「気まぐれ」ってしか言ってくれなかったけど俺はなんとなくわかってる。 「波飛さんとホクは幼馴染で。俺らと同じ年だからって波飛さんが紹介してくれた。…それから俺らはすぐ意気投合して一緒にいるようになったんだけど。」 「…好意を向けられてるとは思ってなかった?」 俺の気持ちを表すのに的確過ぎるコウの言葉に頷く。 ホクの好意を知ったのはホクに犯された日。 それより早くホクの好意を知っていたところで俺に何ができたのか。 俺はホクのことを親友としか見てなかったから… 「うん。…でも、好意を向けられてるってわかってたとしても何もできなかったと思うから。」 ホクのことは友人として大好きだったし、傷つけたくなかった。 あの日は拘束されてたからどうにもこうにも抵抗できなかったけど、もし拘束も何もされずにフリーな状態で告白されたとして俺はちゃんと断れたのか… 「雪希は優しいからね。」 そうとだけ言ってコウは俺の頭を撫で始めた。 頭を撫でられたことなんてないし、変な感覚で身をよじる。 「やめろって。」 「……そういうとこ、可愛いよなぁ」 向けられたことのない感情が向けられて、されたことないことをされて。 俺はどうすればいいんだよ。 「やめっ…俺に言う言葉じゃないだろ。何言ってんだよ…」 可愛いとか、そんなのは俺には無縁の言葉だし俺は言われても嬉しくない。 それに、そんな大切なものを扱うみたいに優しくしてくるな。 どうせ、すぐ離れてくくせに。 「……何言ってんの。どう考えても雪希に言うための言葉じゃん。」 「なっ…」 真面目な顔でそういうコウにこっちが口籠る。 恥ずかしいとか、そういう感情を持てよっ‼ 「自覚無いなら、すっごいいい顔させてそれ見させてあげるよ」 二ヤリとコウが嫌な笑みを浮かべた。

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