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第34話

『どうした、雪希。輝といるんじゃないのか?』 「そうなんですけど…ちょっと波飛さんの家行くことってできますか?」 『え?俺は構わないけど、雪希は輝のとこいた方が…』 「行きたいんです‼お願い…します。」 本当はここを離れたくない。 波飛さんの言う通りここにいた方が安全だし、ここにいる方が気持ちが落ち着く。 だけど、離れるって決めたから。 これ以上言われると決意が鈍る。 それは嫌だから…。 『そう…わかった。心配だから迎えに行く。輝に代わって。』 少しだけ、波飛さんの言葉がきつくなったような気がしてびっくりしたけど言われたとおりに携帯を渡す。 コウは携帯を受け取って別の部屋へ移動していった。 「俺がいるとこでもいいじゃんか…」 なんで、そばにいてくれないんだとか。 そんなことを思う。 ふと、コウの匂いが恋しくなって周りを見渡す。 殺風景なコウの寝室にあるコウの服を手に取る。 しばらく会えなくなるんだ。 思いっきり、コウの匂いを嗅ぐ。 安心できて、あったかい。 コウがいつ帰ってくるかわかんないから、そろそろやめないととは思いつつ恋しくて離せない。 匂いを嗅げばコウの匂いは薄れていって、それが嫌で他の服にも手を伸ばす。 ”コウの匂いに包まれたい” ただそう思ってコウのベットの上にコウの服を並べる。 「できた…」 コウのベットいっぱいにコウの服が合って、寝室はコウの匂いでいっぱい。 コウの匂いに囲まれたら余計体が熱くなってきた気がする。 ズボンを下げて自分のを握る。 「こ…う……ん、すき…だい、すき……」 譫言の様に呟きながら手を動かし続ける。 なんとなく物足りなくて、ずっと濡れてる後ろに手を伸ばす。 「雪希……?」 ふと、かけられた声に扉の方を向く。 そこには顔を真っ赤にして口と鼻を腕でふさいでるコウが立っていた。 恥ずかしい、とかの感情はなかった。 「コウっ、来て!これ、コウの匂いでいっぱい!俺、コウの匂い大好き」 よろよろと立ち上がってコウの腕を引っ張ってコウもベットに引き寄せる。 コウは最初こそされるがままになってたけど少し焦ったように体を離した。 「っ…坂妓がすぐ来るから。しっかりしろ、雪希。」 突き放すような冷たい言葉に自然に涙がこぼれる。 分かってるはずだった。 αは独占欲が強いから、他のαのΩや自分以外のαに抱かれたΩを番にしたり、そばにいたいと思わない。 俺はホクに二回も犯されてるわけで。 誰かに大事にしてもらったりできるわけじゃない。 「ごめ、なさ…コウ、ごめん、なさい」 汚くてごめん。 そばにいたいと思ってごめん。 迷惑しかかけれなくてごめん。 色々謝らなきゃいけなくて、でもうまく言葉が出ない。 「泣くなよ…俺だって――」 「輝っ‼お前、雪希から離れろっ‼」 勢いよく部屋に入ってきた波飛さんの言葉でコウの言葉はかき消された。 波飛さんは俺とコウとの間に入って俺に薬を飲ませる。 「睡眠薬、一回飲んでおいて。起きたら抑制剤渡すから。」 割と即効性の睡眠薬なのか。 すぐに眠くなってくる。 ボケーっとしてきた頭でコウと波飛さんの話を聞く。 「輝っ‼ちゃんと向き合う気がないなら雪希に関わるなっ‼」 「わかってるよ、だけど雪希は俺の……だ。」 「関係ないんだよ、そんなの‼北斗のとこに行くときに俺言ったよな?雪希の過去のことも全部。理解したうえで関わってるんじゃなかったのかよ⁉」 俺の過去のこと…? それって、親が死んでたりすることのこと? 何を指してるんだ? 発情期で、ただでさえぼーっとしてるにも関わらず、薬を飲んだからか余計ぼーっとしてきてうまく考えられない。 少し怖くなってよろよろと立ち上がってコウのベットの上に行ってコウの匂いに包まれる。 胸が痛いけど、安心するコウの匂いを嗅いで。 ゆっくりと目を瞑った。

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