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第42話 波飛side
七海さんと話をしながら過ごすのが日常になったのはいつからだろうか。
それでも何回家に遊びにおいでと言われて、ずっと断り続けていた。
どうしても、雪希と顔を合わせたくなかったから。
それはきっと――
「あれ、七海さんじゃん。どうしたの、調子悪い?」
「え、あ.....波飛くん、別に....?」
七海さんと初めて会ってからもうすぐ三年が経つ。
それでも、俺は七海さんと話をするときに自分の話をしないから叔父さんが病院の先生だと話したことはなかったから。
七海さんは病院で俺と出くわして凄い動揺していた。
「え...っと、波飛くんはどうしてここに...?」
「ここ、叔父さんの病院なんだ。七海さん...どっか悪いの?」
誰かの見舞いで来てるなら、俺と会ったくらいじゃ動揺しないはず。
ここで俺と会って動揺するのは、何か隠したいことがあるから――
あくまで推測だった。
この病院は結構大きい。
軽い怪我とかで来るような病院じゃない。
「えっと、いや。別に、どこも悪くないよ...?」
「...七海さんは嘘ついてるときいつも視線が合わないよ。ねぇ、どこが悪い...わざわざこんな大きい病院に来るなんて...」
七海さんは驚いた風だった。
気まずそうに目を伏せる七海さんに問い詰めない方がいいのでは、と思う。
でも、ちゃんと知っておきたい。
だから俺は、七海さんから視線を逸らさなかった。
「...わかった、話すよ。でも、人に聞かれたくないから...」
暫くして諦めたように口を開いた七海さんは悲しそうだった。
悲しいのは何に対してだったのか――
俺は今もそれが分からない。
人の少ない公園に移動して七海さんはベンチに座る。
俺にも隣に座るように促した後にゆっくりと口を開いた。
「私...死ぬんだ。」
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