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第45話

着いたら起こす 確かにそう言っていた波飛さんは俺の目が覚めたらいなくて。 俺はいつの間にか寮のベッドに寝ていた。 起き上がって机の上を見れば残っていたのは一枚の紙切れ。 紙を持ってベッドに座る。 ”急用ができたから話は今度にする。すまない、後は任せてるやつがいるから。” 急用が、という割には波飛さんの字は丁寧で急いでなかったのが分かる。 なんで、波飛さんまでどっか行くの... 初めていなくなったのは母親。 次がホク。 別に波飛さんはいなくなったわけじゃないのはわかってるけど、声をかけてくれたってよかったじゃないか。 行き場のない不満で涙腺が緩む。 ホクが怖いと思っても、耐えてちゃんとホクを選べばよかった。 そしたらきっと、ホクは一緒にいてくれた。 何考えてるかわからなくて、最近は怖いけど。 でも、それでも。 昔のホクを知ってるから。 優しくて、困ってるって言わなくても感じ取って助けてくれるホク。 きっと、俺がホクだけを見続けていれば俺が悲しいって思ったりすることがないくらい愛してくれるんだろう。 初めての発情期の中で、不定期に訪れる辛すぎるヒート。 今まで発情期について色んな教育をされてきて嫌というほど話された『番』 欲しいとは思わなかったけど、心のどこかで番ができて愛されるなら悪くないかもと思っていて。 ホクなら愛してくれるだろうってわかってるのに、それでもホクを選べずに怖いと思ってしまったのは、きっと。 ホクに犯されたことが俺のトラウマになっているからと、もう一つは―― コンコン ふと響いた扉のノックの音に慌ててベッドから立ち上がる。 もしかしたら、塁かもしれない。 塁に会いたい気持ちは山々だが、発情期が来ている以上、一応αと会うのは控えたい。 扉をひらかれないように慌てるが、波飛さんが俺を連れてきてくれていたこともありカギはちゃんとしまってた。 本来だったら個人でロックをかけてる俺の部屋を開けたんだとか、閉めたんだとか気になることではあるけどそんなのを考える余裕が心になかった。 開けようとして開かなかった扉越しにノックした人の声が聞こえる。 「開けてくれ。」 ひどく懐かしい声に思わず耳を疑う。 なんで...だって、今ここにいるはずなんかないのに。 今覚えばきっと、彼は俺の―― 静かに扉の持ち手を掴む。 間違っても開けられてしまうことがないように。 同時に持ち手が下に下がろうとする。 開かないって分かってても開けようとするところ、やっぱり彼で間違いないんだろう。 「....雪希、俺だよ。また、忘れちまったのか?」 悲しそうな声で問いかけてくる彼に静かに首を横に振る。 扉が閉まってる今、声を出さない限り彼には何も伝わらないけど。 声を出すのが怖かった。 それでも、必死に声を絞り出す。 「と...まさん....」 「っ....雪希、お願いだ。ここを開けてくれ。波飛に話をするように頼まれてるんだ。」 安心したような声。 俺の行動一つで彼は感情が激しく変わる。 それは、俺が彼に過去を打ち明けた日からで。 「わかった。だけど、今発情期...」 「あぁ、それも聞いてる。でも波飛、平気だっただろ?俺も平気だよ。やばそうだったらすぐ出てく。」 その声に、ゆっくりと扉を開く。 うつむいたまま、顔を上げられない俺に声がかかる。 「ありがとう、雪希。」 優しく、大きい手が俺の頭に乗る。

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