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第46話

「うん...久しぶり、斗真(とうま)さん」 その言葉に、優しく笑う斗真さん。 伯父さん家に居づらくなって出った俺を見つけて、居候させてくれた人。 たった数か月だったけど、信頼できて。 「発情期中なのにごめんな。波飛から早めに伝えてくれって言われたから。」 頭を下げる斗真さんに首を横に振る。 俺が、斗真さんのことを忘れてしまったときに斗真さんは塁から全てを聞いていたらしい。 北斗との事件を。 あれから斗真さんはびっくりするほど過保護になって、心配性になった。 迷惑を人にかけまくってる自分が嫌すぎて、斗真さんから離れた。 とはいっても、斗真さんは塁とか波飛さんと連絡を取っていたからすぐに見つかったけど。 そんなことを呑気に思い返していると、斗真さんはゆっくりと口を開いた。 「お前の、母親のことで話がある」 オレノカアサン...? 斗真さんの口から、いや波飛さんから俺の母さんの話だって? 「斗真さんと波飛さんが何を言いたいのかは全くわからないけど、俺を捨てたやつの話なら今はやめてくれない?結構参ってるんだ、一人の発情期って辛いんだよ?」 「わかってる、わかってはいるんだ。だけど、お願いだ。俺の話を聞いてくれ。」 「斗真さん、しつこい。出てって?」 静かに、でもしっかりと圧をかける。 そりゃあ、発情期中だし斗真さんには全然効いたりしないと思う。 でも、Ωだろうが発情期中だろうが俺は喧嘩だってしてきたしそれなりの力はある。 なめられたら困る。 「お願いだ、聞いてくれ雪希。お前の母親はお前のことを捨てたり嫌ってたりしたわけじゃ... 」 「黙れ。.....斗真さん、黙れ。それ以上喋るな。........出てけ。今すぐに」 聞きたくなんかない。 母さんのことなんてもうどうでもいいんだ。 母さんがどうであれ、俺が好きな人は俺を見ない。 俺が汚いのは変わらない。 母さんの話を聞いて変わる可能性があることは―― 俺が喧嘩をしてた理由。 それだけだ。 「雪希......わかった。発情期が終わる頃にでも来る。」 「いつ来たって話は聞かない。」 斗真さんを軽く睨みつける。 斗真さんは変わらず悲しそうな表情をしてしぶしぶ帰って行った。 もう、一人になりたいんだ。 好きな人が来ないなら。 もう、誰がいたって意味がないんだ。 もう、俺なんてどうだっていい。 それこそ.........死んでしまったっていい。 「はぁ.....」 思ったよりも感情が抑えきれなくてため息が漏れる。 このまま起きていてもいいことはないだろう。 斗真さんと話してイライラしてたからかヒートは全然起こらなかったけど感覚的にはそろそろ来てもおかしくない。 あんなのもう一人で耐えられないし、さっさと寝てしまおう。 あぁ、でも先にカギをしっかりかけないと。 ゆっくり立ち上がってドアに近づく。 頑張ってカギを横に回す。 もうそれ以上足に力が入らなくて床に倒れこむ。 床の冷たさが気持ちよくてそのまま目を閉じた。

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