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第49話 塁side
携帯を片手に寮の中をひたすら走った。
もう寝ている生徒がほとんどで迷惑なのはわかってるから少しでも迷惑をかけないよう、それでも必死になって走った。
途中、電話のコールが切れた音がした。
そして、声が聞こえた。
『こんな深夜にどうした、塁』
「波飛さん、雪希と会いましたか?」
『?会ったし、色々あったけど寮に送り届けたよ。何があったかは俺の口から言うべきことじゃないからお前にならいつか雪希本人が話すだろ。どうした?』
「わかりました、また後で連絡します!すみません。」
本当はこっちからこんな時間に電話かけてるんだしもっとちゃんと説明するべきなんだろうけど今はそれどころじゃない。
寮の先生の部屋はまとまってる。
誰でもいい、起きててくれ。
あまり騒いで迷惑をかけないように、静かにノックしていく。
.......もう、寝ているのか?
起きていないのか?
最後の一つ。
最後の頼みのドアをノックする。
「ん...?」
ものすごく眠そうだが返事があったことに安堵する。
「あっ、一年の長岡塁です。深夜にすみません。緊急でお話があるんです。」
ここで拒否られたらすべてが終わる。
だから慎重に、嫌がられないように...
「あぁ、わかった。開けるから中入って、他の人の迷惑になるだろう。」
その声とともにドアが開いた。
開いた先にいたのは、
「...風希先生?」
「ん?そうだけど....」
不思議そうに首をかしげる風希先生に少し眉を顰める。
寮はそこまで一人の部屋が広くないから入ってすぐにベッドが見えるがおそらく誰かが寝ている。
先生のそういう事情を知りたいわけでもないからどうでもいいけど、寝ている人に失礼...
って、そんなこと今はどうでもいいんだ。
早く、雪希を助けないと。
「雪希っていうやつが同じ一年にいるんですが、そいつの部屋から鈍い音がしてそのあと返事がないんです。でも、あいつΩだから俺は開けれなくて。それで、その....」
「状況は分かった、すぐ行くよ。鍵持ってるの俺だから。」
鍵を持ってるの風希先生だったのか...
初日の自己紹介の時、少し怖いと感じた風希先生とは話す機会もなかったから如月先生のところにいくつもりだったけど風希先生が持っているならよかった...
「ありがとうございます!俺は雪希の部屋の前に行ってますね」
もと来た廊下を走って戻る。
静かに、迷惑にならない程度にドアを叩く。
それでも変わらず返事はなくて。
ただ、うっすらと甘い香りがした。
.....アマイカオリ?
もしかして、雪希ヒート中?
いや、ヒートだったら匂いが漏れないように扉がなんか作動するって言ってたよな、詳しくは覚えてないけど。
じゃあ、何の匂い?
「雪希くんの部屋ってここ?」
後ろから声が聞こえて振り向けば風希先生が走ってきたところだった。
頷きながら俺は扉から離れた。
「先生、匂いが漏れてるじゃんか。これって、もしかして...」
「わかってるよ、開けるから離れておきな。気をつけないと他のαが起きてくるかもしれないから何を見ても静かにね。それができる自信がないなら部屋に戻って鍵を閉めていなさい。わかったね?」
コクンと、返事の代わりに頷いて少し距離を取る。
雪希に何があったんのかの方が心配だ。
ちゃんと俺は我慢しろ。
確認のために先生がノックして扉を開ける。
「っ.......!!」
目に入って来た光景に絶句した。
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