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第51話 波飛side
「塁...雪希は?」
病院の待合室の端っこで俯いて座っている塁を見つけ、後ろから声をかける。
パッと顔を上げて振り返った塁の目には涙が溜まっていた。
「頭が切れてて、取り合えず縫い合わせたみたいなんですけど....その...」
絶え絶えに雪希の状況を話す塁に雪希の悲惨さを感じ取る。
なんで...輝は雪希を守ってくれないんだよ。
斗真さんに連絡を入れた後、すぐに輝に連絡したけどあいつは反応しなかった。
”運命”だっていうなら、ちゃんと守ってくれよ...
「受け身を、全くとってないんです」
「え...?」
塁の言葉に思考が停止する。
雪希は受け身を取るのが何においても上手くて、だからこそ全然怪我をしてこなかった。
なのに受け身を取ってない?
部屋の中で倒れていたんだろ?
なのにどうして...
「一体、何で...」
「残酷な言い方になりますけど”死にたい”って思ったんじゃないですかね。」
突如、見知らぬ声が割り込んできてとっさに身構える。
声をかけた相手は一瞬きょとんとした後すぐに笑った。
「驚かせてすみません。寮の責任者の風希光舞と申します。」
「あ、あなたが...すみません、坂妓波飛と言います。.....今の、言葉は一体?」
雪希が死にたいなんて、思ってるのか?
発情期が辛すぎて?
「そのままですよ。僕たちが雪希くんの部屋に入る前、雪希くんのフェロモンの匂いがしたんです。寮の部屋のドアはヒート中のフェロモンだったら外に漏れないようにするようになってるんですけど、漏れていた。つまり、命の危機だった。それはわかりますよね?」
念を押すように話す彼の言葉に頷く。
命が危険にさらされると、Ωはフェロモンを出すということを教えられている。
「案の定、と言っては何ですけど扉を開けたら雪希くんは頭から血を流して倒れてた。しかも、正面から。.....手をどこかについてる感じはなかったんです。」
彼の言いたいことが痛いほどわかった。
でも、どうして?
なんで、雪希は...
「塁くんからあなたのことは聞いてます。僕が医者から聞いた話を話させてください。」
まともそうな先生がいたことに安心する。
少し、覚悟して聞いてほしいという彼の言葉にただ事ではないことを理解する。
塁もまだ聞いていなかったらしく一緒に話を聞くという。
「覚悟はしててほしいです。あと...一つ聞きたいことがあるんです。」
「わかりました..ただ場所を変えれます?」
「それなら、俺の部屋行きません?寮だったらカギしっかりかけれるし」
塁の提案に俺も彼も頷く。
雪希がいつ目を覚ますかわからないから、そばにいてあげたいのは山々だけど状況をしっかり理解する方が大事だろう。
「僕、車で来てるんで乗ってください。」
「ありがとうございます。塁、急ごう。」
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