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第53話 波飛side

「ちょっと散らかってるんですけど..どうぞ。」 「ありがとうございます。」 散らかっている、という言葉の割には綺麗な風希さんの車に乗り込む。 本当だったら輝の胸ぐらを掴んで殴りたいところだけど、状況が分からないからそれもできそうにない。 もし、輝がけろっとしてたら取り合えず殴るには殴ろう。 「波飛くんはさ、雪希くんと結構長く一緒にいるんだよね?」 「へ?..あ...はい」 考えていたらいきなり話しかけられて、変な声が出る。 そんな俺のことをそこまで気にする様子もなく、風希さんは話を続けた。 「この前、輝に『運命に出会った』って言われて。それからあいつは凄い幸せそうだったんだよ。相手が誰かはあいつが隠してたからわからなかったけどね。だから、一緒にいれてお互いに幸せなんだろうなって何となく思ってた。でも...雪希くんに無理をさせてたのかな。あいつは...」 信号で止まりながらも強くハンドルを握って悲しそうに眉を下げる彼を見ていると俺もわからなくなってきた。 でも... 「本人じゃないんで、本当のところはわからないですけど。雪希は、言ったんです。俺に...『俺...コウのそばにいたい』って。...辛いことがあっても隠すタイプだからいつもは定期的に雑談したりしてたんですけど..俺があんまり話してると輝がうるさいですし、あいつになら任せられるって本気で思ったんですけど...」 何回も何回も傷ついてきた雪希の心を、輝なら救えるって本気で思った。 七海さんから託されたのは俺だけど、託されたのは雪希のこと。 雪希を守って幸せにする人。 その人に出会うまでを俺がサポートすればいい、だから間違ってない。 「本人じゃないからわからないのが本音だよね...輝があんなに幸せそうだったの初めてみたし、生徒として雪希くんに接したことは数回あるけど彼は本当にいい子だから..まぁ、時と場合によって口は悪いんですけどね...」 学校での雪希の様子。 俺が知ることのできない雪希の様子を聞くことができて安心する。 雪希が元気になったらもっと話をしよう。 輝が本当に無理なら俺が全力で守るから。 「え...電気ついてない.....」 知らず知らずのうちについていたらしく風希さんが言葉を漏らす。 パッとそっちの方を向けば言葉の通り、電気は消えていた。 わりと広い輝の家。 どこも電気がついていないなら寝てるのか? そんな安易な俺の考えは風希さんの言葉で一蹴される。 「輝、寝るときは絶対にどこかの電気付けるっていってたのに...波飛くん、急ごう。僕、この家の合い鍵の場所知ってるから。」

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