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第54話 輝side

初めて、守りたいと思う存在に出会った。 ぶっちゃけ、恋愛とかどうでもよくてめんどくさかったしその場限りの関係を持った相手なんて山ほどいる。 男も女も、α以外であれば誘われれば乗った。 「雪希...」 チビで生意気で。 でも、どこか悲しい過去を持っているような感じで何かを隠していた。 そばにいたかったんだけどなぁ.. 「手を出さないでいれば、変わってたのかな。俺の......運命。」 運命に会うなんて思わなかったし、ヤれればいいって思ってたからむしろ会いたくなかった。 でも、雪希は大事にしたいって思ったし。 こいつが俺の運命で、俺が一緒にいれるならこの上ない幸せだって本気で思ってた。 「頭痛い...体調崩すなんて普段ないのに。」 雪希に何があったのかを聞いて、悔しかった。 俺の運命が傷つけられてたこと。 傷つけた相手は懲りずに雪希に会いに来ること。 なのに、なのに雪希は―― 『ホク呼んでっ!!ホクに会いたい...苦しいから、早くっ....!!』 俺を拒否した。 俺よりも、傷つけてきたやつを選んだ。 信じられなかったし、信じたくない。 考えるだけで頭が痛い。 もう、思い出したくない。 ふと、電話をかけようかと思いつく。 雪希に会うまでは毎日のように相手を探してヤってたし、相手もわきまえてくれてるから楽で。 連絡を取ろうかと悩む。 「俺は、選ばれなかったんだよ。運命に...やっぱり、恋愛なんて懲り懲り。....運命に出会えば、幸せになれるなんて嘘だったんだよ。.......まぁ、雪希が幸せならいっか。」 手にした携帯を放り投げてベッドに横になる。 ベッド横のテーブルに乗っかった二つのビンのうち、中身の入っている方を取る。 雪希と離れて一週間経ったりしたわけじゃないのにこんなに寝れないのは何で? 薬を取り出して一気に飲み込む。 「寝よ...」 少しだけ震える声と、震える指先は―― きっと、運命になら選ばれるって信じてたからだろう。

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