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第3話

直之の実家は下町の小さなネジ工場だった。 大学卒業を目前に控えたある日。直之に縁談が持ち込まれた。 相手は取引先の中でも最大手のご令嬢で、次期社長修行のつもりで父親が取引先に連れ回している最中に、直之が見初(みそ)められたらしかった。 『断った所で取引に支障は生じない』 相手は言ったが、こちらはしがない町工場(まちこうば)。周りには同じような工場が山程ある。万一、契約を切られたら関わる人間数十名が一家路頭に迷うことになる。斯波家に、直之に、選択の余地はなかった。

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