5 / 10

第5話

「腹が減った」 乱した褥の上で身支度を整えた直之は言った。ぶっきら棒で甘えた子供のようだ。 「これしかないけど」 苦笑して出されたのはいつもと同じ冷奴。 「こんなのしか食わないから、なつめはいつまでもガリガリなんだ」 「でも好きなんだよ。俺の好きなものは冷奴と、なおだけだ」 「俺はつまみと同列か」 不満を口にする直之に、彼はまた苦笑する。 「──ごめん。なおの方がずっと好き」

ともだちにシェアしよう!