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第7話
親の決めた結婚に直之はどうしても従えなかった。従える訳がなかった。
愛する人が居たのだから。二人で居る事だけが幸せだった。
だから遠くに逃げようと決意した。彼らは若く、他の方法など目に入らなかった。
卒業式を終えたあと駅で落ち合う約束だった。
──結局その約束は、叶わない。
父親は知っていた。その上で、当時社長秘書だった上原に二十四時間、寝食を共にするよう言い付けていた。要は監視だ。
監視は一ヶ月以上続き、結納の済んだ後に解かれた。
当然すぐに直之は相手の下宿に会いに行ったが、既に引き払った後だった。遠方と聞いていた実家の住所も知らない直之には為す術がない。そして結婚の期日が迫り、二度と会えないまま音信不通となった。
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