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『だめんず・うぉーくを止めるとき』番外:『手作りバレンタイン』~その5~
昼過ぎ、俺は帰宅した。すると、彰が迎えに出てきた。
「昴太、お帰り!」
俺は目を丸くした。まさか先に帰っているとは思わなかった。
「え、何お前、早いじゃん?」
「うん、昴太を待ってたんだ」
彰は何やら上機嫌だ。よくわからないまま部屋に入った俺は驚いた。狭い部屋いっぱいに、甘い匂いが漂っていたのだ。
――いや、まさか……。
「ハッピーバレンタイン」
彰が、にっこり笑う。テーブルの上には、信じられないものがあった。
――チョコレートケーキ。
しかも、形はところどころいびつだ。嘘だろ、と俺は思った。
「――これ、お前が作ったのか?」
「初めて作ったにしては、上出来だと思わないか?」
彰が、得意げな顔をする。俺はあっけにとられた。
「お前、バレンタインなんか忘れてたんじゃ……」
「去年はそれどころじゃなかったろう? 今年はちゃんとお祝いしたくてね。昴太は甘いお菓子好きだし、食べさせてあげたくて」
「ありがと……。でも、何で手作り?」
こいつは、壊滅的に料理下手なのだ。何でまた、そんなことを思い立ったのか。すると彰は、申し訳なさそうな顔をした。
「だって、料理は昴太にさせてばかりだろう? 悪いなって思ってたんだ。こういう記念日くらい、僕が作ろうって」
「そんな……。お前は掃除とか、他の家事してくれてんじゃん」
俺は、胸がいっぱいになった。
「お腹空いたろう? 取りあえず、食べてみてよ」
「ん」
勧められるがまま、俺は席に着くと、ケーキを口にした。
「――おい、めちゃくちゃ美味いじゃんか!」
俺は目を見張った。お世辞ではない。初めて作ったとは思えないできばえだった。
「でも、いつの間に練習したんだ?」
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