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第16話

「でも忘れろって言った」 「そういう意味じゃなくて……、ごめんな」  言いたくて言えなかった言葉。いくら臆病でもここで言えなかったら江崎くんを好きでいる資格もありません。森永さんも覚悟を決めます。 「俺の方が、江崎のこと好きだ」  口から言葉が飛び出すのと同時に、森永さんに実感がわき、腕の中で泣き喚く江崎くんに釣られるように涙が盛り上がります。  強く、泣きじゃくる身体を強く抱き締めて、もう一度好きだと呟きます。江崎くんに聞かせるためじゃない、だけど聞いて欲しい、身体の真ん中から溢れる気持ち。  好きだと言葉にする度に、こんなに好きなんだと実感する気持ち。  涙に堪える声で「好きだ」と言い募る森永さんの声。 「……ほんとうに?」  ぽかんと、信じられないとでも言うような江崎くんの声。 「本当だ、ごめん、言えなくて……。前から、江崎のこと……好きだったんだけど……、」  森永さんは感情のままぎゅうぎゅうと江崎くんを抱き締め、苦しくなった江崎くんが「ギブ! ギブ!!」と森永さんの背中を叩きました。あわてて腕を離すと、余程苦しかったのか江崎くんがハァと深い息をついて呼吸を整えます。 「ごめん……」 「本当ですか?」 「え?」 「俺のこと、好きっての……。前から? 本当に?」  涙で濡れたままの瞳で江崎くんが森永さんに確認します。  そ、れ、は、反則!!  あまりの可愛さに『ピーッ』と森永さんの頭の中ではレッドカードが出されますが、そんなことはおくびにも出さずに森永さんは「本当だ」と答えました。そうですね、それが賢明です。  江崎くんは号泣したせいで鼻水も出てるし、しかも抱き締められた苦しさのあまりそれを森永さんの服に吹き付けちゃってるし、顔は真っ赤だし……とても可愛いと言える状態ではありませんが、でもしかし、それがとてもカワイイ。この状況でこんなこと思うなんて、本当に不謹慎と言うかなんて言うかアレなんですけど……  気持ち良さにめちゃくちゃになってる時みたいで……!! 正直、たまらない!!  ……って、森永さん、そんなこと考えてたら良くないんじゃないですか? 「……」  ほら、ナニかを感じた江崎くんが太もものあたりを気にしています。 「……本当に、ごめん……江崎、俺の下半身正直者すぎて……」  ムクムクと育ったちんちんの持ち主があやまります。こんなに真剣に話してるっていうのに、もうちょっと待ってくれよと言っても、もう後の祭り。意識してしまったらどんどん熱が集まってきます。 「ヤりたいとかそう言うのじゃなくて、本当に好きなんだけど、好きだから反応しちゃうっていうか……抱き締めたいと勝手にこうなるっていうか……」  グズグズと言い訳をする森永さんに、江崎くんはクスリと笑ってしまいます。 「本当なんですね」 「え?」 「俺のこと好きっての。だって森永さんのちんこが本当だって言ってる……」 「本当だけど、ごめん……」  そんな所で真意を計られても……。森永さんはちょっと気まずく視線を泳がせます。 「あやまらないで下さいよ。俺だって男ですからわかってますってば。それにそんな風にされたら……」  今までとは違う少し恥じらった顔の江崎くんがグリッと腰を森永さんの太ももに擦り付けます。そこには、江崎くんに反応した森永さんに反応して固くなった江崎くんの……。 「ここが、一番正直で隠せないってことですかね?」  恥じらいをごまかすようにエヘと笑う江崎くん。ハァと大きな溜息をついて、森永さんが江崎くんをもう一度やさしく抱き寄せました。 「俺、もう30超えてるのに……」 「え、30歳過ぎると勃たなくなるんですか?」 「いや、そんなことないけど……、盛った10代みたいで恥ずかしいだろ」 「だったら、俺だって20代ですけど」 「江崎はいいの、20過ぎたばっかりなんだからほとんど10代と一緒」 「えー、だったら森永さん……て、いくつですか?」 「今、それ?」  思わず二人して笑います。  ハァ、と息をついて、江崎くんの熱い吐息に森永さんが囁きました。 「話すのは、後にしよっか……」  コクリと江崎くんが森永さんに頭を寄せ、それを合図に二人の唇が重なります。

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